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クロネコヤマトが体現する現場を活かすパートナーシップ経営

1977年に上智大学の篠田教授の「全員参加の運輸事業経営」講演を聞いたヤマト運輸の代表取締役社長の小倉昌男氏はこの考え方をヤマト運輸に取り入れた。

篠田教授が提唱したのは経営者と労働者が共に働く対等な関係にあり、経営や人事などの情報は従業員にも公開し、成果は互いに分配することで従業員は自己管理と自発性を高めることができるというもの。これが浸透することで経営と従業員は同じ目的意識を持つことができるようになる。これの考え方をパートナーシップ経営(共同体経営、小倉氏は全員経営と呼ぶ)と呼ぶ。

全員経営を導入したヤマト運輸は組織図を上がセールスドライバー、下に社長という配置に変えた。現場にいるセールスドライバーがスタープレーヤーとして扱っているからだ。現場にスポットライトをあてただけではなく権限移譲も見直された。それまで破損荷物の処理はセンター長が損害額を判断していたが、セールスドライバー自身の判断で対処できるようにした。

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特に宅配便という業態変化を行ったヤマト運輸は現場のセールスドライバーの価値向上が急務であったため、全員経営の導入によって現場のやる気を引き出すことができたことで事業を成長させることができた。

ただし全員経営は以下の課題がある。

①社内のコミュニケーションの改善
②小集団の活用
③経営の成果配分

特にコミュニケーションの改善は篠田教授が特に重視している。パートナーシップ経営に大切な自発性は社長が持っている情報と同じ情報を従業員が知り得ることで実現する。従業員は社長がこうしてほしいだろうと推察することで社長と同じ様に行動できるようになる。

ただし社内のコミュニケーションが難しいのは共有される情報に偏りがあると社内派閥を作り出してしまうことにある。小倉氏も全員経営(パートナーシップ経営)を導入するにあたりコミュニケーションを最大のカギと言っている。

第一線の社員の能力を重視し、年功序列といった旧態の人事を排除する。それが全員経営の成功には欠かせないが、なんといっても最大のカギは、社内の「コミュニケーション」にある。
小倉昌男 経営学 (Kindle の位置No.2272-2274).

コミュニケーションがうまくいけば社員全員がやる気をだし、与えられた仕事を自律的に目標を達成できるようになる。やる気の有無は労働の成果に影響すると考えた小倉氏はまず以下の2つのコミュニケーションを改善した。

①簡潔に具体的に示す
②管理階層のパイプを正しく繋ぐ

簡潔に具体的に示す

情報は正しく伝わることが大事になる。かといって利益を伸ばせとだけ言っても従業員にはただの訓示として伝わってしまい正しいコミュニケーションにはならない。従業員がどのように取り組めばいいか戦術を自身で考えられるようにするために納得できるように説明する。例えば会社としての戦略では以下のような内容を伝える。

①企業の目的とするところを明確にする
②達成すべき成果を目標として明示する
③時間的な制約を説明する
④競合他社の状況を説明する
⑤戦略としての会社の方針を示す

また、小倉氏は宅急便のサービス開始時に社内メンバーへ「サービスが先、利益は後」という標語を周知させている。サービス初期の収支問題を気にしすぎて従業員が判断を迷わないようにするために優先順位を示していた。

別の事例としてヤマト運輸社に張り出されている「安全第一、能率第二」というポスターがある。安全第一だけではマンネリとなってしまい誰も気にしない、安全も能率もどちらも大事だと話しても中途半端になり改善しない。第二があるからこそ第一がより明確になり、戦略的な意思決定の思考が身につく。

管理階層のパイプを正しく繋ぐ

経営との現場とのコミュニケーションを繋ぐのに中間管理職が担うのだが、中間の層が幾重にもあるとコミュニケーションのシステムはうまく機能しない。そのため管理の階層は少ないほうが良い。

ただし組織が大きくなると社員のやる気を阻害する管理職が多くなる。社歴が長くなると慣習に従わない従業員へ細かく指示をしたがるようになる。こういう慣習を重んじる人は経営と現場の橋渡しとしてのコミュニケーションも苦手だったりする。

パイプに差があっても問題になる。極秘情報が一部のメンバーだけが保持すると微妙な駆け引きを引き起こしてしまう。

参考書籍


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