ペット用ジビエおやつ『島素材』、福岡県宗像市・大島から発信するこだわり
今回はローカルツーリズム株式会社代表で、ペット用ジビエおやつ『島素材』の責任者でもある糀屋総一朗が、普段より製品の加工や販売などをサポートして下さっている『犬の一日』のオーナー・石隈さんのオフィスへお邪魔。対談形式でこの商品について語り合いました。
そもそも『島素材』は、数あるペット用のおやつとどんなところが違うの? など、飼い主が気になる目線でもお届けします。
自分の飼い犬に美味しいおやつをあげたくて
ーーひと懐っこくてかわいいビーグルですね。毛並みもツヤツヤしていて綺麗です。
石隈:もう13歳になるんです。そもそも11年前、このマルコに与えていたおやつの仕入れ先が今後は製造できないという話を聞いて、じゃあ自分たちでやるか! と一念発起して仕入れ先の会社から製造方法を引き継いで、犬のおやつを作り始めたのが開業のきっかけです。
糀屋:もはやペットは家族の一員だから、ペットフードもエサというよりごはんだし、おやつも立派な嗜好品ですよね。
石隈:ですね。そもそも、おやつって主食になるペットフードとは違うから、逆に言うと与えなくてもいいと言えば与えなくてもいいものなんですよ。けれど僕らはそのおやつをあえてあげることでワンちゃんとのコミュニケーションがより円滑になると考えています。なので、おやつは、犬と飼い主さんのふれあいにおいて特別な時間という位置付けです。そういうのって、人間もですが、ワンちゃんにも必要だと思ってるんですよね。
なので、せっかくあげるならば、健康や栄養の良いものを与えて行きたい。世の中に出ているおやつは結構添加物が使われているものが多くて、無添加のペット用おやつというのは、いまだにニッチな分野です。でも、食べ物由来のアレルギーが原因で皮膚病やアトピーで悩むワンちゃんと飼い主さんって結構いらっしゃるんですよね。その点、無添加だとノンケミカルなので継続的に安心して与えられるのは魅力だと思います。
天然ジビエ食材でできた『島素材』は最高のヘルシーおやつ!
ーー『島素材』のこだわりを教えてください。
糀屋:島素材は、「神守る島」とも呼ばれる福岡県宗像市大島で獲れたイノシシ肉を100%使った犬用おやつです。もともとは島の害獣として狩猟していたのでこれまで流通経路には乗っていませんでした。島の人たちの食用として扱われていたものをペット用に加工できないか? とこちらからアイデアを持ち寄って生まれた商品です。なので、人が食べてももちろん安全なイノシシ肉を使用しています。
イノシシは猟師さん自ら島内で捌き、チルドの状態で石隈さんの工場へ送っていますので、より新鮮な状態でお肉を加工してもらっています。冷凍ではなくチルド、その利点を活かせるよう、福岡にある石隈さんの工場にお任せしようと思いました。
石隈:島の猟師さんが一頭一頭、丁寧に扱っているところは大きなポイントだと思います。通常だと流通までに業者をたくさん挟むんですよね。お肉を生産してるところから別の解体場所に持っていき、そこからまた卸業者が入って、加工までという流れがスタンダード。それでもちゃんとトレースできてるものならいいと思うんですが、なかなか難しく、どこかで何かしらの薬品が使われてたりとかも多いんです。
ーーなぜ薬品が使われるんですか?
石隈:やっぱり保存とかでお肉の色が変わらないようにするためですね。そのため、仕入れの段階でお肉が冷凍ということも殆どですが、島素材ではチルドで届きます。なので長期冷凍ものを使っておらず、新鮮な状態で乾燥工程まで入ってるって言うのはやっぱり他との違いかなと思います。
糀屋:トレーサビリティーはしっかりしていますね。
大島の地の利を活かした、その土地ならではの味わい
糀屋:僕も実際食べてみたんですが、大島産のイノシシ肉ってとても美味しいんですよね。嫌な臭いがない。猟師さんの腕が良いというのもありますが。
石隈:大島のイノシシは、主に椎の実やマテバシイというどんぐりを食べているそうです。野外で活動しているので成長過程でも薬品を使っていない。素材の状態も部位も、人間が食べられないものをペット用に回す、というノリではないんですよね。ヒューマングレードのものを使っている、人間でも佐賀のありた鶏とか聞くとブランド肉ってわかると思うのですが、まさにその感覚で作られています。
糀屋:お客様に感想を聞いても、割と犬種を選ばず食いつきがいいと言われますね。イノシシ肉は鉄分・ナイアシンなどのビタミンB群・タンパク質など美容や健康に欠かせない栄養素が豚や牛と比べても2倍以上の含有量があります。ワンちゃんも喜びながら栄養要素の高いものを継続的にあげられるのは大きなポイントですね。
*島素材の栄養素に関してはこちらのnoteをご参照ください。
ーー食べて元気を維持できるのは嬉しいですね。
糀屋:そうですね。大島は海・山・川に囲まれた、福岡でも自然豊かな地域です。自然のめぐみをたっぷり受けて育ったイノシシ肉であることは間違い無いですし、野生で育ったからこそ、大島ならではの味わいになっています。産地ならではの味を、ワンちゃんにも愉しんでいただきたいですね。
実際に食べているワンちゃんの様子。ジビエの獣の匂いがワンちゃんにとって嗜好性が高いのだそう。
製造にはめちゃくちゃ手間がかかっている
石隈:苦労した点をあげるとすれば、猟師さんもペット用で捌くのは初めてだったので、当初は脂がついた状態で送られてきたんです。ただそれだと乾燥が不十分になりカビやすくなる。そこで工場の意見などを吸い上げた上でマニュアルを作って、糀屋さんにも入っていただきながら猟師さんにお願いをして、ペット用にスネやモモを中心とした赤身肉をなるべく脂を除去した状態で送っていただいてます。
色々と説明は省きますが、ブロック肉で届くまでの調整は大変な作業なんですね。また季節ごとにお肉の状態も変わるので、完成までには何度も加工や乾燥などテストを繰り返して、商品化するまで結果6ヶ月ほどかかりました。
ーーこの細かいチップになるまで試行錯誤があったんですね!
石隈:ちなみにこのチップは、一度ミンチにして伸ばして切ってます。
ーー想像以上の手間暇ですね……。
石隈:ほかに島素材では細切りタイプもあるんですが、これも全て一つ一つ手切りです。スライサーはいっさい使っていません。お肉の形状に合わせて、かつ、ワンちゃんが食べやすいようにとなると、やはり手切りになるんですよね。そこはこだわりを持ってやってます。けれどそれでも、完成品は取れ高の26%くらい。なので本当に希少性の高い商品なんですよね……。正直あまり利益ばかり追求すると大量生産のものと比べたら非効率だとは思います。
ーーそれでもなぜ商品化しようと考えたんですか?
糀屋:僕は悪かろう安かろうというものを作るのは嫌なんです。特に地方はどんどん人が減っていく状況なので、生き残っていくためには一個一個のサービスや商品の生産性をあげていかなきゃいけない。なので質を高めて、そのこだわりに共感して買ってくれる人へ届けたいと考えています。
本来は駆除の対象で、島内での消費もしくは廃棄で終わっていたイノシシが、視点を変えたら、サスティナブルの輪として生まれ変わる。ワンちゃんも喜んで、飼い主も喜んで、島の住民も喜ぶ。地方が生き残る上で新たな産業を生み出して行きたいと思いましたし、それを通じて大島のひとたちにより自分の土地を好きになってもらいたいな、という想いがありますね。『島素材』も、これからどんどんラインナップを増やしてさらに多くの飼い主さんや消費者さんに喜んでもらえるものを作っていこうと考えています。
糀屋:この商品を通じて一人でも大島を知って、足を運んでくれるひとがいたらいいなと思っています。また現在ペットホテルも島内に計画しているので、ペット家族に優しい商品やサービスをさらに展開していきたいですね。
ーー改めて、『島素材』の特徴を整理します。
ーーそのほか、他のジビエフードとも比べて特徴的な点はありますか?
石隈:ジビエフードは、やはり加工の技術が大切になってきます。うちは業界内でも珍しい、管理栄養士さんが商品企画室にいますので、商品開発から栄養面での配慮が行き届いているのも大きなポイントです。そして何より工場のメンバーが一つ一つ目や手を使い作っていますので、大きな違いになると思います。
実際に製造工場を見学してきました
清潔で明るい工場。照明も明るく商品の状態が目視しやすい。(工場は最近リニューアルしたばかり)
脂身やイノシシ肉に絡んだ毛を細かく取り除いていく(まな板の右側にほんの少しあるのが脂身)
こちらが乾燥にかける前の状態。できるだけ薄すぎず、厚すぎずを心掛けているそう。全てが手作業。形も並べ方も綺麗です。
乾燥機にかけて1日半〜2日で完成です。
元々は犬の保育園のトレーナーだったスタッフさん。添加物まみれのおやつを持たせる飼い主さんに違和感を持ったのがここで働くきっかけになったそう。「人間が好きな時好きなものを食べられるように、ワンちゃんもバラエティに富んだそして体に良いものを愉しめるような人生を送って欲しい」というのがスタッフさんの願いです。
ーーありがとうございました! さいごに、おすすめの食べ方など教えていただけますか?
石隈:この『島素材』は病中・病後のワンちゃん、シニア犬、運動量が多いワンちゃんにもおすすめです。もし食欲がない、ペットフードを嫌がる状態であればぜひ細かくちぎってフードのふりかけにしてもいいですよ。ジャーキーもお湯でふやかしてあげると食べやすくなります。ぜひワンちゃんの状態に合わせて食べ方も工夫してみてください。
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(取材・構成:フルカワカイ)