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各地のローカルエリートが連携すれば大きな力になる 菊池勇太×糀屋総一朗対談3

ローカルツーリズム代表・糀屋総一朗と、地域を変えるキーパーソンの対談。今回は福岡県北九州市の門司港エリアでゲストハウスの運営、まちづくりに関わる菊池勇太さんです。対談の後編は、

起業はカジュアルになるべきなのか

菊池:ローカルから外れますけど、ホリエモンの次の世代の起業家たちは、ホリエモンのようにガツガツしてない人がほとんどな気がします。世代的にも、ああいう形をみんな目指してなさそうだし、もうちょっと緩やかな感じになるんじゃないかなって思いますね。僕らって昭和の起業家みたいに、「自分をすべてつぎ込む」的なアイデンティティで頑張ってますけど、もう少し「部活」ぐらいのテンションでやれるぐらいにしないといけないとも思うんですよ。

糀屋:そうなんですよね。

菊池:最近の起業家の子たちって一種のゲームっぽい感じがしません? ITベンチャーとかの「2億円資金調達しました!」「オフィス移転しました!」「〇〇と提携しまいた!」みたいな話も含めて、マネーゲームの中で「どう勝つか」とか、「どうやったらゲームの中で評価されるか」という闘いをやってるような。

糀屋:でも実際そうなんでしょうね。ツイッター見ててもそんな話ばっかり。

菊池:でしょ?そういう人たちの価値観と、ローカルエリートの価値観って明らかに違うから、部活みたいなテンションで地方で起業して……みたいなことってあんまりないじゃないですか。単純にこっち側って、きつそうに見えるんじゃないかなと思うんですよね。ただ、そういう層が地域で頑張ってくれるようになったとしても「部活でウェイウェイするようなやつが増えたところでなあ」って地域住民からいろいろ揶揄される可能性はたくさんありますけど。

地域間で連携し、優秀な人材を集めたい

菊池:全国で同じ悩みを持ってる人は多いと思うので、そろそろ全体で手を組んで、大きな財団とか、何か大きな一般社団みたいなものを作らないと厳しいかもなと思っているんです。そういうところに分配して投資してその次のマネージャークラスの人とか優秀な人材を少し増やしていく仕組みとか。

糀屋:僕も地域間の人材の流動性みたいなものはもっとあってもいいのかなと思ってて。例えば、菊地くんと(熱海の)市来さんとかがね、連携していくとか。各地域にはそれぞれ人材がいるわけじゃないですか。そういう中の交流があった上で、「ちょっと今大島これで困ってるんだけど」「それだったらうちこういう人材いますよ」って人材を流動的にやりとりできたりしたらいいですよね。

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菊池さんが運営するゲストハウス「POLTO」の外観

菊池:僕もそれは考えていて、今、福岡でコワーキングスペース『SALT』をやっている須賀大介さんに話しているんです。今、ソフト系の仕事のやれる人とかってどの地域でも欲しいわけじゃないですか。1人を一社で囲うのは難しいけど、4〜5社で1人囲うことはできると思うんですよね。そうしたら優秀な人をもっと集めることができる。

糀屋:それはできますよね。

菊池:みんながみんなフリーランスになりたいわけじゃないと思うので、従業員としてそういった形で共同組合のようなところが雇用するっていう仕組みはどうかな? と思うんですよ。人材の教育や、人材の雇い方とか、もう少し多様にできるように各社が連携したい。そういう形の人材の流動性とか住む場所の流動性が担保された雇用をどれぐらい作れるかってのは地方の勝負かなっていうのは感じているんですよ。

糀屋:うん、面白いですね。

菊池:クリエイティブ系は入りやすいと思うんですよ。うちのスタッフのさくらちゃんって子もそうなんですけど、デザインとか文章が書ける能力を育てながら、ゲストハウスの管理をずっとやってもらってるんです。ハイシーズンのときは宿のスタッフだけど、だいたい年度末のオフシーズンの時ってちょうど行政とかの委託業務が忙しくなるんですね。冬で一番仕事がなくなる時期ってのは、クリエイティブとかソフトな仕事だったら、そういう二足のわらじも履ける。そうするとどの地域に行ってもだいたいご飯が食べれるようになっていくんじゃないかな。

夫婦でカフェやりながら、実は裏でデザインやってますとか、個人でそれを実現してる人はいますよね。ああいう形態を従業員だけでできてる状態を実現させるのは結構いいんじゃないかなと思って。より人材の流動性も高まるし、都心部からそういう人も雇いやすくなるだろうし。共同求人みたいな形がとれるかなと思ってます。

糀屋:面白いっすね。僕もやってみたいな、それ。

菊池:それ作りません? 今から声かけていこうと思ってたんですよ。一つの地域で求人出すっていうやり方じゃなくて、勤務地は2、3年は流動的にぐるぐる回りますと。ただ、その半分ぐらいはクリエイティブな仕事、デザインとかブランディングとかやってもらう。観光やツーリズムに関連するような仕事ってだいたい代理店やJTBが取ってるでしょ。俺はあれも悪しき慣習だと思ってるんで、あれをローカルエリートの人たちが連合で組んだ会社で取りに行きたいって思うんですよ。

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糀屋:それいいと思うな。

菊池:民間の力だけど、1社でやるんじゃなくて、共同組合的なところで仕事を獲得していく。単社だったら雇えるクリエイティブ人材は3〜4人が限界だったとしても、4〜5社集まったら5人、10人のチームを作れるから、代理店と遜色ないものを作り上げられる。そういう可能性はあると思います。

糀屋:面白いと思いますね。今うちのローカルツーリズム社で木下くんに戦略アドバイザーに入ってもらうって話をしてるんですけど、彼も興味持って協力してくれると思うんですよ。なので木下くんを交えて、仕組みなり、スキームなりを作っていけそう。木下くんは発信力あるし、地域の横の繋がりも結構多いから、そういう感じで持っていくとかすれば何か形が見えるのかな? って。

勝負はあと3年

菊池:僕あと3年で変わる兆しが見なかったら、もう台湾に移住しようと思ってるんですよ。

糀屋:ええ!? それ、初耳ですね。

菊池:外資側に回ろうと思ってるんです。中から食い止めることができないとわかったら、開発をしようとしてる側とか、入ってこようとする側の中にリテラシーを持ち込むしかないと思うんですよ。そこにこちら側の参画を少しでも入れていくっていうことですね。九州はほぼほぼ中国にやられる可能性の高い地域だから、結局、九州を動かすのは中国サイドになっていくんで、だったら台湾に行く。

糀屋:行ってほしくないな(笑)。

菊池:事業を進めてもらうなら、少なくとも文化度が高い人たちにやってもらいたいと。せめて新しく再構築する人たちにリテラシーを持ってもらうために台湾に入ろうと。勝負はこの3年から5年で決まりそうな気がするんですよ。大きなテクノロジーの革命が起きた瞬間に、都心一極集中という構造がちょっと崩れる可能性はあるのかもなと思っているんですが、そこまでみんな頑張りきれるかってとこもありますよね。頑張ってきた人がちょうど40ぐらいに差し掛かってるんで皆さんの体力の限界がくるし、その下が育ってるって印象はどの地域でもないし……。

糀屋:菊池さんが台湾に行く前に、何とか日本に残ってもらえるよう、僕は活動をしますよ。

菊池:いや、もちろんそうならないようにしたいんですけど(笑)。

糀屋:さっきの人材の話もそうですけど……色々とお願いします。

菊池:僕は僕で勝手に動こうとしていたので、糀屋さんとかやってくれるんだったら我々も連携します。糀屋さんとか木下さんが入ってくれた方が客観的にいいと思うんですよね。あとはローカルプレイヤーの人って得意分野が意外とわかれたりするんで、そういった意味合いでも連携しやすいのかなとは思います。会社組織とはちょっとまた違う、大きい力になる可能性はあるなと思いました。

糀屋:日本ってやっぱり地域の魅力がすごく大きいので、そこに貢献できるようなことを積極的にやっていこうと思ってるんで。

池:そこは本当にそうだと思っています。だって都市に文化なんかほぼ存在しないんじゃないですか。福岡市なんかはわかりやすい例だと思いますけど、僕は福岡に文化度を感じたことはないんですよね。

糀屋:それ「ブックス・キューブリック」の大井さんとその話してて、僕もそうだなって思ってそういう話してました。

菊池:文化だとしても、それはここ50年ぐらいで作られた文化で、時間軸で考えるとやっぱり浅い。欧米諸国とかとかもそうですが、人が本質的にいいって思うようなものって何かこの50年間ぐらいでほとんど作られてないんじゃないかなと思っているんですよね。僕が好きな「風景」や「食べ物」もそうですけど、やっぱり本当に心地がいいものっていうのは、すごい時間軸が長く設計されて作られたものだったり、それぐらいの長さの耐久力を持って残ってるものだったりすることが多いですよね。神社とかそういう意味でパワースポットって言ってるんじゃないかな? って。そういったものをどれぐらい後世に残せるのか? っていうのが僕らの勝負かなと思っています。

糀屋:そうですね。

菊池:都市の人もそういうものは残ってほしい気持ちとか、それに惹かれて観光に行ったりしてるっていう側面が実際あると思います、残し方とか仕組みのことを何か考える人、その活動に賛同する人が少なくともあと5万人ぐらい増えてくれたら結構大きいと思います。東京ドームいっぱいぐらいそういう人がいたら、日本は変わるかなって感じ。今はまだ何かスタジアムの中に3000人ぐらいな気がするんですよね。

糀屋:コロナ禍の野球場みたいな状況ですね。

菊池:そうそう。満員になったら結構変わるかなって感じが感覚的にはあるんですけど。コロナもあって、そういう動きは加速してる気はしてるんで、ちょっと追い風かなという感じはしてるんす。働き方の自由度が高まって、地方に移住するハードルが下がって。東京に嫌気がさしてる人の数も増えてる気もするし。「個人の幸せを考えるなら地方」という状態に持って行ってね。そのために多様性がある環境を整えておくっていうのが大事だと思うんですけどね。

糀屋:いや、本当そうだと思います。地域のいろんな問題もあるけど、今日はちょっと糸口も見えて、前向きな話ってできたなと思って。すごい面白かったです。ありがとうございました。

(構成・齋藤貴義)

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