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オルタナティブスクールって何?

「オルタナティブスクール」という言葉を聞いたことはありますか?これは、いわゆる既存の公立学校とは異なる、新しいタイプの学校を指します。「オルタナティブ」という言葉には、「伝統的ではない」「別の選択肢」という意味があり、その名の通り、従来とは異なる多様なアプローチを採用しているのが特徴です。

既存の公立学校では「学ぶ内容は教える側(先生)が決める」「みんな同じ内容を同じ方法で学ぶ」「校則があり、それを守らなければならない」といった仕組みが一般的です。一方、オルタナティブスクールでは、子どもの興味関心や発達段階を重視し、子ども自身の選択や決定を尊重する学びを大切にしています。多くのオルタナティブスクールでは、子どもが自分に合った学び方やテーマを選び、主体的に成長できる環境づくりを大切にしています。

このような学校は、既存の学校教育に疑問を持った人々の声から生まれ、おもにヨーロッパやアメリカで発展してきました。「モンテッソーリ」「シュタイナー」「デモクラティックスクール」など、さまざまなタイプがあります。小規模で個別対応を重視する学校を「マイクロスクール」と呼ぶこともあります。

公立学校とどう違うの?

公立の小中学校は、国が定めたルールやカリキュラムに従って教育を行います。たとえば、授業時間や進度が全国一律で決められているので、どこでも同じような教育が受けられる仕組みです。

一方、オルタナティブスクールは、こうしたルールに縛られません。子ども一人ひとりの興味やペースに合わせてカリキュラムを作ることができ、個性を伸ばすことに重点を置いています。学力試験がなかったり、体験や探究型の学びを重視したりするのも特徴的です。

先生の役割も、生徒の自主性や個性を尊重しながら、学びをサポートするガイドやファシリテーターとしての役割が重視されることが多いと思います。

親の立場からすると、「子どもの自主性に任せたカリキュラムで、果たして社会で求められる基礎学力が十分に身につくのだろうか?」と心配される方もいるかもしれません。スクールの方針によって対応は様々ですが、子どもの興味や個性を尊重しつつ、基礎学力をしっかりと身につける工夫をしている学校もあります。

例えば、生徒が楽しみながら主体的に学べるプロジェクト型の学習を取り入れたり、基礎学力の向上を目的に特定の時間帯を設けて基礎科目を体系的に学ぶカリキュラムを組んだりしている学校もあります。このような取り組みによって、子どもたちは必要な知識を自然に習得しながら、学ぶ楽しさも感じられる環境が整えられています。

例えば、1921年にイギリスで設立された「サマーヒルスクール」は、オルタナティブスクールの代表的な例です。この学校では、授業を受けるかどうかを生徒が自分で決めることができます。また、学校のルールは全校ミーティングで話し合い、先生と生徒が一人一票で決定します。このような自由で民主的な教育は、世界中に影響を与えました。

サマーヒルスクール(イギリス)
https://www.summerhillschool.co.uk/

なぜオルタナティブスクールなのか

今、なぜオルタナティブスクールが求められているのでしょうか。

まず、行き過ぎた受験戦争や学歴偏重主義が、子どもたちの人権を損なっているのではないかという懸念が挙げられます。子どもも一人の人間で個性や尊厳を認められるべき存在であり、同質性を強制しがちな教育体制への批判から、オルタナティブ教育が求められた側面があります。

多様な背景や特性を持つ子どもたちに対して、現在の公教育が受け皿になりきれていないという声があります。公教育に適応しやすい子どももいれば、そうでない子どももいるため、子どもの特性に応じて教育の選択肢を多様化すべきだ、という考え方です。

なにより、これから訪れる未来の社会に適応できる人を育てるためです。AIなどの革新的な技術が加速度的に普及する現代において「必ず将来に役に立つこと」を教えることは難しい状況です。急速に変化する環境や社会に対応するため、何を学び何を教えるべきかを大人も子どもも共に模索していく、そんな姿勢が必要になっていると考えます。

Network School の挑戦

2023年、私たちは「Network School」というオルタナティブスクールの構想を立ち上げました。この学校の目標は、子ども一人ひとりの個性や興味に合わせた柔軟な学びを提供することです。さらに、地域の大人たちも参加して、自然や地域文化を生かした学びの場づくりをしながら、新たな「風土」を作り、持続可能な社会を切り拓いていく子どもたちを育みたいと考えています。

Network School は、既存の公立学校と連携しながら、子どもたちに多様な学びの選択肢を提供することを目指しています。子どもたち一人ひとりには、それぞれに合った学び方や環境があります。だからこそ、選択肢が多ければ多いほど、子どもたちが自分らしく成長できる機会が広がると私たちは考えています。

Network School に通う子どもたちは、尾鷲市の公立学校に籍を置きながら、独自の学びの機会を得られます*。小中学校の期間を Network School で過ごした後、高校に進学する場合には、公立学校と連携しながら、子どもたちが最適な進路を選べるようサポートします。しかし、従来のように進学一辺倒ではなく、「働く」と「学ぶ」を自由に行き来する選択肢についても可能性を追求していきたいと考えています。すべての世代がいつでも学び直すことが当たり前になる時代において、義務教育修了後に必ず高校へ進学するという「当たり前」も変わりつつあると捉えています。「起業してみる」「職人を目指して働く」「世界中を旅する」など、一度社会に出てフィードバックを受けることで、若いうちに自らの能力や個性を客観的に見つめ直し、そこから新たな学びへのモチベーションが生まれる可能性があります。義務教育課程を終える15歳というタイミングは、社会に出て自分を試すのに決して早すぎるわけではないと考えています。
*公立学校の卒業資格も得られます。

気候変動を生き抜く力を育てる

近年、猛暑や豪雨などの気候変動がもたらす自然災害が増えています。しかし、自然はリスクだけではなく、私たちの生活を支える恵みでもあります。

Network School では、地域の自然環境を学びの場として活用し、プロジェクト型学習を通じて子どもたちが自然と向き合う力を育みます。

例えば、自然の力を正しく理解し、それと共存する中で培われてきた知恵や技術を、体験を通じて学ぶことや、壊れてしまった環境や生態系を取り戻すためのアクションに実際に取り組むことによって、身体感覚を伴いながら「人間が自然の一部として生きていく」文化の担い手となることができます。また、基礎学力の習得は、これらのプロジェクト型学習を効果的に進めるための基盤であり、気候変動を生き抜くために必要な教養の一つと捉えています。

モデル校となる Network School 尾鷲

私たちは、Network School の第一歩として尾鷲にモデル校を設立する予定です。この地域の豊かな自然を活かした学びを提供するとともに、テクノロジーも活用して、他の地域ともつながる仕組みを構築していきたいと考えています。

現在、この Network School 構想を一緒に実現してくれる仲間を募集しています。教育や環境、地域課題に向き合いたい方にとって、全力で挑戦できる絶好の機会です。ご興味のある方は、ぜひ説明会にご参加ください。

Network School 尾鷲の採用ページはこちら
https://owase.localcoop.io/recruit2024

Network School 設立準備委員会