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「大事なことが書いてあるから読みにくくても面白くなくても読め」はだいぶ前からもう通用しなくなっているがそれに気付いていない人が結構いる

 前回、消費増税10%が始まった2019年10月1日の夜に見つけた「5ちゃんねる」のスレッド「日本新聞協会『新聞がんばってるから!解約やめてね!やめてね!」の書き込みを引用しながら、「新聞と軽減税率」について書きました。
 今回は、軽減税率と直接関係がなかったので前回割愛したのですが、このスレッドで一番心に刺さった書き込みを引用し、それを起点に展開してみます(表記は原文のままです)。

「テンプレ記事しか書けない無能の集まり その癖偉そう」

 新聞業界内についてよく分かってる方による書き込みだと推察されます。「マスゴミ」「売国新聞」「権力の手先」と罵倒されるより、こういう「患部をえぐるような」批判の方が関係者にはダメージが大きいはずです。以下は、この書き込みに込められた思いについて、「意識低い系」流に読み解いていきます。「読み解く」なんて大げさなものではありませんが。

①テンプレ記事

 ここでいう「テンプレ」は、「表現上のテンプレ」というだけでなく、「発想のテンプレ」という意味も含まれていると思います。
 「表現上のテンプレ」は、新聞にありがちの「手垢のついた文章表現」と定義してみました。

「うれしい悲鳴を上げた」「なりゆきが注目される」「議論を呼びそうだ」「そっと置いた」「嘆き節が聞こえる」「批判の声が相次いだ」「独自の戦いを進める」「関係を紡ぐ」「肩を落とした」「表情を曇らせた」「唇をかんだ」「人波どっと」「近くて遠い間柄」「無言の帰宅」

 思いつくまま挙げてみました。ここまで「いかにも」な紋切り型表現はさすがに少なくなりましたが、今でもデスク(記者が書いた原稿をチェックする役割の人)の目をすり抜けて掲載されることがあります。逆にいうと、こういう表現を使うと文章が(一昔前の)新聞っぽくなります。

 これに対する「発想のテンプレ」は、「新聞にありがちな発想の仕方」と定義してみます。この話は深いので、いずれ別稿で取り上げようと思いますが、ざっくりとこんな感じです。

 ・政治家は私利私欲でしか動かない。選挙のことしか考えていない。現場を知らない
 ・公務員は仕事をしたがらない。保身のことしか考えていない。現場を知らない
 ・行政がちゃんと対応していれば、(自然災害、いじめ問題などの)被害は最小限に食い止められたはずだ
 ・障害者はかわいそうな境遇の中で精一杯前向きに頑張っている
 ・人類は「進歩」「生活の便利さ」と引き換えに何か大切なものを置き去りにしている

 ネットでいう「左派マスコミ」系っぽい発想テンプレートばかり挙げてしまいました。近年流行の「右派マスコミ」系の発想テンプレートもあるはずですので、思いついたらあらためて挙げてみようと思います。スタンスの左右問わず、「いかにもこの新聞が言いそうなことだね。何の発見も驚きも新鮮味もないわ」ってやつです。

 ただ、「発想テンプレ」批判には「諸刃の剣」の部分があります。例えば、
 ・人を殺すな
 ・ウソをつくな
 ・相手を思いやり、助け合う気持ちが大事


 こういう考え方に対して、「発想が古い」「常識を疑え」などと逆張りして炎上狙って目立とうとしたらクリック数を稼げてマネタイズできたんでこの成功事例を情報商材にして売ろうかって方もネット界隈に一定数いると思われますが、そういうものに与する意図はありません。申し上げたいのは、「新聞記者はものを書く仕事なんだからさ、ケチらずに自分の頭を使おうよ」ってことです。

②そのくせ偉そう

 「そのくせ」という言葉に注目し、この書き込みをされた方の気持ちを想像してみます。偉そうなヤツは嫌いだけれど、創意工夫を凝らした発見と驚きと新鮮味のある記事を書く有能な集団とあれば「まあ偉そうでもしょうがないか」と容認できなくはない。でも、お前ら(新聞)は威張るほどの中身ないだろ?ーってところでしょうか。

 「テンプレ記事しか書けない無能の集まり」なのに、なぜ威張ってるのか? 最近の若い新聞記者で威張る人はほとんどいないと思いますが、ぼくより上の世代(50、60代と退職したOB)は会社を問わず、「偉そうな人」がホントに多いです。長年そういう先輩・同僚たちを観察してきた経験から想像するに、威張る背景にあるのは、たぶんこういう発想です。

「新聞の記事が『読みにくい』『つまらない』だと? インテリでエリートなオレたちが価値のある大事なことを選んで書いてるんだから、読みにくくても面白くなくても読め。そもそも読みにくくて面白くないと感じるのは、お前が教養がないからだ!」

 取材でネタを取ってくるのは苦労も多いのですが、書くのは「慣れ」なんで、書き続けていれば誰しも「それなりのレベル」には達します。で、紙面で社説やコラム、評論っぽいのを書くベテランの記者は、現場感覚が薄くなってきている上に、業界歴が長くて「表現テンプレ」「発想テンプレ」が脳の引き出しにいっぱい入っているため、「それっぽい」けどつまらない原稿を量産してしまうんです。

 この辺にも、新聞という業態がここまで衰退した一因があると思います。「紙に印刷しているから」ではないのです。

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