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『隣人を愛するということ ─日系アメリカ人と日本を助けたフレンド派の人々の記録』杉村宰 著
人々が平和を叫んでいるにもかかわらず、ロシアとウクライナ、パレスチナとイスラエルと、残念ながら今なお戦争が繰り返されている。日本もかつて真珠湾のアメリカ艦隊を攻撃したが、当時アメリカにはおよそ12 万人の日系人が在住していた。
攻撃以降、敵性外国人と見なされ、日系人はアメリカ各地の強制収容所へ送られることとなったが、そんな状況の中、キリスト教プロテスタント系のフレンド派の人たちは「隣人を愛する」という信念のもと、日系人を支え続けた。イギリス人ジョージ・フォックスを始祖とし、霊的な神の力がほとばしることにより、時には感動の余り震えたので、一般的にはクエーカー(震える者)と呼ばれる。日本での支援活動は戦前に遡り、1891年に中部地方を襲った濃尾地震での医療救済活動に始まる。日本を代表するクエーカー教徒と言えば新渡戸稲造だが、彼と内村鑑三の助言で東京・三田に女子教育のための普連土(ふれんど)学園を創設。収容所から解放される日系人のシェルターとしてホステルを全米に開設し、最近の活動としては日系人の補償請求実現に尽力するなど、戦中戦後を通じて助力を惜しまなかった。ハーバード・ニコルソン宣教師は広島で原爆投下を謝罪した最初のアメリカ人。
敵はもともと自分の作り上げた幻想から生まれてくる。神の光に導かれ、国境・文化・言葉を越えて相手の立場に立って行動してきたフレンド派の人々の記録。彼らから学べば、本当の平和が見えてくる。(Y)
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