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高校のトイレがとても古かった。

通っていた高校のトイレがすごく古かった。
古いだけではなく、珍しかった。

通っていた高校は生徒用と教員用の棟が分かれているタイプの校舎で、教員用トイレはリフォームをしたのか、すごく綺麗だった。
電気は自動点灯式で、洋式で、どこにでもあるごくごく普通のトイレだった。
音姫もあった。

問題は生徒用のトイレだった。
タイル張りの薄暗いトイレは和式で、トイレタンクは高い位置に取り付けてあるハイタンク式と呼ばれるものだった。
そのタンクから紐が垂れ下がっていた。
その紐を引っ張ることで水が流れる仕組みの、なんともレトロなトイレだった。
もちろん、音姫なんてものは存在しない。

私にとっては初めての出会いだった。
最初は水をどうやって流すのか皆目検討が付かず、休み時間ギリギリまで狭い個室の中で困り果てた。
しかもこのタンク、一度流せば水が溜まるまで時間がかかるために、2度流したい時にすごく困った。
なんせ音姫は付いていない。

時々こっそり教員用のトイレを使わせてもらった。
だって明らかにストレスフリーだったからだ。
教員に見付かっても特になにも言われなかった。
先生たちも分かってくれていたんだろうと思う。

私は高校3年間、そのトイレと共に育った。
今でもあのトイレは健在なのだろうか。
後にも先にも、同じトイレに出会ったことは一度もない。
この令和の世、生徒のためにも新しく綺麗なトイレになっていることを願ってやまない。



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