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そしてベトナムは私の“推し”になった
27歳のとき、激安パックで初めてホーチミンの地を訪れました。
スーツケースを買う余裕もなく、スポーツバッグみたいなのを背負って飛行機に乗ったな…。
当時通っていたイラストレーターの学校で知り合った、同じくベトナム好きの友人とふたりで、ひたすらホーチミンの街を歩く旅。バイクタクシー?の営業を断るのが大変だったのをよく覚えています。
その時食べた新鮮なドラゴンフルーツの味や、ガイドの人に、日本人はお腹を壊すから絶対に食べないように、と言われた直後に屋台で食べたフォーの味(値段は100円ほど。ふたりともお腹は全く大丈夫だった)。
公園で、小学生くらいの男の子が売っていた採れたてのアセロラが酸っぱくて美味しかったこと。すれ違う人たちがとても優しくて笑顔だったこと。
すべてが新鮮で、東京でブラック企業を渡り歩くような生活に追われていた日々を忘れさせてくれる、夢のような旅でした。
それから色々な仕事を転々としながらもなんとか東京でひとり暮らし、34歳で結婚して、少し生活にも余裕が出てきた頃。ちょっとベトナム料理でも勉強してみようかな…と検索をしたのがことの始まり。
Google検索:ベトナム料理 教室
いくつか候補は出てきたのですが、ものすごく通いやすい場所にあるではありませんか、良さそうなベトナム料理教室が。ベトナム料理本を何冊も出されている、伊藤忍先生の教室です。
ドキドキしながら言ってみると、なんと教室は1コマ4時間ほどもあり、先生のレシピ説明から実際に料理を作りながら歓談しながら、最後はしっかりお料理をいただく流れ。10年以上通い続けている生徒の方も多く、私はペーペーすぎて小さくなりながらも先生にひとつ質問すると、10倍くらいになって答えが返ってきます。的確で丁寧、深いベトナム料理への造詣と知識が垣間見られる、まるで大学の講義を受けているような時間でした。
私はABCクッキングのような大手の料理教室しか経験がなかったので、目から鱗な感動的な経験でした。この深くて面白いベトナム料理を、もっと学びたい。
アイドルなどの推し活には全く興味もなく、“推し”とは無縁だと思っていた人生でしたが、最近気づきました。ベトナム料理教室が私の“推し活”なのだと。
40代も半ばで初めて出会った“推し”との出会い。その後1年ほどで会社員をやめてベトナム料理人を目指すことになるのですが、その話はまた今度。
始まったばかりの“推し活”。どうぞお付き合いくださいませ。