『美しい彼』が教えてくれたもの
BLなんて好きにならないと思っていた私が、今はBL本を読んで号泣している。
私はただただイケメンが好きだったのだと、22年生きてきてようやく諦めがつきました。
好きなタイプは?ってよく聞かれる質問に、優しい人とか爪が綺麗な人とか答えていたけど、そんなのは建前で私は普通にイケメンが好きだったのです。
だからBL本によくあるイケメンとイケメンが好きかも、やっぱり好きじゃないみたいなゴタゴタをただ傍観者として見ている時間が至福。
いいなー、イケメンがイケメンを思って泣いてるよ。っていう軽いテンションだったはずなのに…
何故だか今は、片足突っ込んでそのまま抜けなくなっている事態です。
これはBLに限らず言えることかもしれないですが、最近の恋愛コンテンツは造形レベルが深くないですか?
言わずもがなこの映画で平良と清居を演じる、萩原利久さんと八木勇征さんはカッコいい。
でもビジュアルのカッコ良さそれ以上に、
画面の中の2人は平良と清居で、美しい彼という物語を丁寧に綴っている。
どのシーンも捨てがたいですが、今回の映画で、私の中で圧倒的なシーンが一つ。(ここからは少しネタバレを含みます)
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ベッドのシーツを取り替えるシーン
清居が平良のいるベッドにやってくる。
売り出し中の若手俳優である清居、有名なカメラマンに自分の写真を撮ってもらうことが決まった。しかもそれは平良がアシスタントとして師事しているカメラマンだ。「一緒の現場だな」と嬉しそうに話す清居とは対照的に、平良の表情は晴れない。
カメラマンを目指す平良にとって、清居の存在は恋人で、同時に1番撮りたい対象。
ましてや平良がカメラマンを目指す理由の全てはきっと清居にあるのだろう。
嬉しそうに隣で笑う恋人、絶対に敵わない師匠。
平良はいつも師匠の隣で、その実力の差をまざまざと見せつけられている。
それでも、自分が撮りたかった。自分が彼を1番美しく撮りたかったし、撮れるはずだと…
言葉にできない感情が、平良の中でとぐろを巻いて多少暴力的にも見える動作で現れる。
清居は普段の平良を知っているし、2人の間の信頼関係はそんなに簡単に揺るがない。清居は平良を拒むことなど無かったが、平良は酷い自責の念に駆られる。
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いつの時代かの「いっけーない!遅刻遅刻」から始まる恋!みたいなお話はそこにはなくて、
自分の知らないどこか遠くで
この物語に出てくる人たちはきっと生きているんだろうなと思えるような
心の機敏に丁寧に触れて、そのキャラクター一人ひとりに手をのばせば、触れるんじゃないかと錯覚するくらい解像度を高めてくれる描写。
私が美しい彼を知るキッカケは原作小説の一節がたまたまTwitterにあがっていたからで、
それを何の気も無しに見て、私はもう既にあのとき心を鷲掴みにされていたんだと今は思います。
清居は間違っている、それでも平良だけにとっては正しかった。
その後に続く清居の平良に対する粗暴な態度もこの言葉を思い出せば…
平良が納得しているのであれば、この関係はきちんと成立しているのだ。
2人の話は高校時代から始まります。
1番多感で、脆くて、だからこそ攻撃的になってしまう。そんなか弱い生き物たちが生きるには余りにヘビーでエグい独自世界。
他者が介入すれば、ぱっと崩れてしまいそうなギリギリの均衡で保たれている2人の関係。
きっと誰にも理解されなくても、彼らは幸せだったんだろうな。
でも理解したいと思ってしまった。
映画館を出た後に、電車に乗って帰らないといけないのに、すぐ電車に乗る気分にはなれなくて、意味もなく外を散歩してました笑
「あー、私、生きてるな。 生きてるし、ホントはあんな2人みたいに生きたいな」
なんか壮大にそんなこと思いました。
この表現が合っているかは分からないけど、中毒性のあるこの映画は、私にとっては合法のドラックでした。バイト終わりに観に行くあの時間がどれだけ心地良かったことか。
小規模上映で始まったと聞く「美しい彼」
ドラマseason1・2に続く待望の映画化ではあっだけれども、他の大きな映画配給に比べれば、予算も人手も小規模なことであったことは、容易に想像がつきます。
それでも、その中でも、キャストやスタッフ関わった全ての方が、きっとこの『美しい彼』という映画を大事に大切にされていたんだろうな。丁寧な演出がそれを物語ってました。
一般人の私すら、お前誰だよ目線でこの映画を愛してしまいます。
今は5月7日、上映終了が近いという声も聞かれます。それでも25万人を動員したこと、今からロスの声が鳴り止まないこと、多くの人たちがこの映画に魅了され、そして一生懸命に生きてる平良と清居の幸せを願った。
多くの方にとって、この映画が永遠でありますように。
エターナル
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