リレー小説その①「煙の川」
お久しぶりです。
さんぴん倶楽部の役満です。
皆さん夏感じてますか?
自分はただただ蒸し暑いだけの今みたいな季節めちゃくちゃ不調なので早くあの爽やかで儚い夏が恋しいです。
最近忙しくて何もかけてなかったんですが、
先日このブログを書いてる1人から提案があって、「リレー小説」なるものをやっていこうという事で、テーマを決めて短い文章を書いていき、それを各々が自己解釈で創作していくリレーをはじめたいと思います!
それで、僕らがテーマにあげたのは「夏の匂い」です。
なのでそれについて一つ話を作ったので是非暇つぶしがてらに読んでください。
物語を作って形にしたのはほぼほぼ初めてなので、軽い気持ちで楽しんでもらえると幸いです。
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テーマ【夏の匂い】
リレー小説その①「煙の川」
夜に聞こえるセミの音はどこか儚さを感じる、とふと思う。
さっきまで賑やかだったテレビを消して部屋はとても静かになったからだ。
地元を離れ東京へ来たばかりだからか、一人暮らしとはとても孤独で、涼しい夏の風さえも寂しく感じてしまう。
なんてことを考えながら、布団を敷いてみたものの、なんだか眠るのが惜しい私はふらふらと本棚に手を伸ばす。
なんとなく背伸びしたかった私は、祖母が残していった本の数々の中から何冊か持ってきたのである。
眠くなりそうな本はどれだろうと考えながら、一番難しそうな本を手に取りパラパラとめくる。
すると畳と線香の香りが狭いワンルームにひろがった。
そうして私は幼い頃の思い出に包まれていった。
あれは私が初めて一人で祖母の家に泊まった時の事。
夏の休み。
昼間から親戚が皆で集まり、宴会をしていた。私は歳の近いいとことジュース片手に遊んでもらっていた。
そうこうしているうちに楽しい時間は過ぎ、気付けば人も減っていった。
外が暗くなるにつれて、ホームシックになった幼い私はおろおろと廊下を歩き回っていた。
ぐるぐるとさまよい、不安で泣き出しそうな私を祖母は布団に寝かして、隣で子守唄を歌ってくれた。
優しい歌声と背中を叩く心地いいリズム
うとうとしたところで子守唄は止まった。祖母は先に寝てしまったようだ。
静寂の和室。
風に揺れるレースのカーテンはまるで夜が手招きしているよう。
遺影の視線。
線香の煙は幽霊のように踊る。
古い家は大きな骨のように軋んでいる。
ボムボムボムボム
団地の小さな祭りの帰り、少女の水風船。
妖怪の足音の様だった。
セミの声と風に揺れる木々に耳を傾けているうちに、私は夢と現実の間で空を飛んでいた。
気が付けば朝日が差し込み、祖母は台所で糠床をいじっていた。
私は蹴飛ばしたタオルケットを踏みつけ、台所へ走った。
本の文字を追いかけながら、そんな事を思い出していた。もちろん、本の内容は全く入ってきていないが、何となく穏やかな気持ちになってきた。眠い。
本を閉じ、枕元に置き、電気を消した。
忘れないうちに新幹線の切符を予約しなければ、とメモを残して目を閉じる。
レースのカーテンが優しく揺れる。
畳と線香の香りとセミの声に包まれ夢うつつ。
歳をとってもホームシックな私は、子供の姿であなたと遊んだ。
さんぴん倶楽部 役満