【創作アイドル】卒業制作の話(長め)
前回は卒業制作の概要を軽く紹介しました。今回はわかりやすさを優先して、長めの内容となります。
概要
改めまして、今作品はキャラクターが「アイドル」という単位を修了し、他のコンテンツの「キャラクター」へと進んでいくプロジェクトになっています。
これはアイドルキャラクターが「永遠にアイドル」でいる呪縛からの解放と、それに伴いフィクションゆえにキャラクターには終わりがないことの提示を目的としています。
テーマが決まるまで
卒業制作“で”やる意味
「二次元アイドルが好きだから、卒業制作は二次元アイドルを使用した作品にしたい」
最初こそこんな感じでしたが、まず「卒業制作は何のためにやるのか」ということから考えました。
以下、当時のメモの一部です。
意味や目的が無いと卒業制作ではない。無くていいならそれは趣味でいいため、わざわざ卒業制作展で展示する意味が無い。
「好きなことをやりましょう」の結果が頑張りましたね、すごいねで終わっていいのか?
「やりたい」だけではなく、それに加えてどうしたいのか、どう感じてほしいのか。
既にあるコンテンツの内容の真似をしたところで目新しさは無く、ただただ影響を受けた“それっぽい”作品になってしまう。
この場合、既にあるアイドルコンテンツとの差を出す必要があったので、アイドルコンテンツの分析から始めました。
なぜ二次元アイドルに惹かれるのか。
二次元アイドルとリアルアイドルの違いとは何か。
「キャラクター」とは何か。
主に考えていたのはこの辺りです。
また、現在のように二次元アイドルを好きになる前はAKB48などのリアルのアイドルにハマっていました。離れてしまった理由としては、卒業してしまうからでした。
そこで「アイドル文化における卒業」に着目することにしました。
「アイドル文化における卒業」とは
面白いことにリアルのアイドル文化には学校でもないのに「卒業」という概念が定着しています。
アイドルに「卒業」という文化を連想させるようになったのは、おニャン子クラブが発端とされています。
おニャン子クラブは「放課後クラブ活動」というアイドルコンセプトで1985年に結成し、活動していました。
引退するメンバーが出ることになった際に、クラブ活動は学校の一環であるため、引退すなわち「卒業する」という表記へ落ち着きました。
現に、アイドルがグループから「卒業」していくことに違和感を覚える人は多くはありません。そしてアイドルを経て、業界に残る人は女優やタレントへの道に進むパターンがあります。
ではそれがリアルの人間ではなく、架空の存在であるキャラクターだった場合、リアルのアイドル文化特有の卒業は二次元アイドルコンテンツにどう適応するのか。
卒業制作のテーマが決まりました。
テーマの次は目的です。
目的を決めるまで
リアルのアイドル文化に「二次元アイドル」を使う
…とはいったものの、今作品で題材としている「二次元アイドル」はキャラクター、架空の存在です。フィクションであるため「設定」がない限り歳を取らない、衰えない、騒がれるような熱愛や引退もありません。リアルのアイドル文化の「卒業」が当てはまらない存在であり、永遠に「アイドルキャラクター」でいることが当然のようになっています。
先程、現実だったらアイドルを経て、業界に残る人は女優やタレントへの道に進むパターンがあると言いました。「現実」を描かれる二次元コンテンツであるなら間違いではありません。
ですが、既にあるコンテンツの内容の真似をしたところで目新しさの無いものになってしまうので、そこで次に着目したのが「キャラクターであること」でした。
「キャラクターであること」の強み
何十年も「アイドルキャラクター」でいること「アイドルキャラクターのまま」でいること、他に何も役割が与えられないことは、ある種の呪いとも言えます。
アイドルを経て、女優などの次の道に進んでいくリアルアイドル文化の「卒業」部分は変えずに、キャラクターはアイドルを経てどう次へ進んでいくのか悩んだ結果…
他のコンテンツのキャラクターとして存在することで、架空の存在だからこそ終わることのないといった、キャラクターならではの強みを使用できると考えました。
つまり、アイドルキャラクターが「永遠にアイドル」でいることの呪縛からの解放と、フィクションゆえにキャラクターには終わりがないことの提示を目的に、制作することにしました。
このプロジェクトに参加している彼女たちは自身が二次元の存在であること、キャラクターであることを自覚しているため、アイドルキャラクターを経て漫画やアニメ、ゲームといった次のコンテンツへと進んでいき、現在でもキャラクターとして存在し続けています。
以上が「二次元アイドルキャラクター」に「リアルアイドル文化の卒業」を組み合わせた卒業制作の内容です。
最後に
「AKB48とは、夢のショーケースである」
卒業制作をまとめていて、昔AKB48のドキュメンタリーで秋元康さんがそう言っていたことをふと思い出しました。
秋元康さんがアイドルを通過点とし、育成の場である「学校」で例える場面が多いことも、ショーケースであると言い切ることも、この題材で制作したからこそ数年越しに理解できるものがあります。
アイドルアニメでは、漠然とトップアイドルを目指すことが今やテンプレートとなっています。「トップアイドル」になった先に、次は何を目標に歌い踊るのでしょうか。この卒業制作・創作アイドルに込めた考え方が、キャラクターにとっての次の選択肢の一つになればと思っています。
次回はグループ名の
「OrteSia(オルテンシア)」について触れます。