塗膜調査あるある4 塗膜調査仕様書にツッコミをいれてみる
次回予告を変更して、急に相談を受けた案件の仕様書についてお話しします
業務場所等
関東地方 某県 対象橋梁:H鋼桁橋および単純鋼鈑桁橋
業務概要及び目的
・「PCB特措法」に基づきPCB含有塗膜を分析調査を実施する
・厚労省通知「(中略)労働者の健康障害防止について」に基づき分析調査を 実施する
本見出しの内容は「PCB特措法」で15行、「厚労省通知」で3行の記述となっており、「PCB特措法」目的の調査がメインであることを示唆しています。
適用図書
「ポリ塩化ビフェニルを含有する可能性のある塗膜のサンプリング方法について(通知)」を主とし、協議により適宜追加削除できるとしています。
塗膜採取方法について
①採取する試料は、サンプリング場所ごとに2箇所
②ポリ塩化ビフェニルを含有する可能性のある塗膜のサンプリング方法について(通知)に基づく
③塗膜試料採取後における塗膜の補修費用は計上しているが、詳細な補修方法については監督員と協議を行う
④塗膜採取方法は、塗膜剥離剤による採取を想定
⑤塗膜試料採取において、ブラスト工法や手持ち電動工具等を用いた塗膜採取方法を用いる場合には鉛作業主任者等、場合によっては特定化学物質作業主任者を配置し作業すること
Ⅰ サンプリング場所ごとに2箇所と指定するのは珍しいです。
Ⅱ ②で示された通知では、採取方法として物理的手法を用いた乾式を主とし、場合によっては剥離剤使用の湿式で行う、としています。
Ⅲ 詳細な補修方法が明記されていません。
Ⅳ 関東地方における採取方法は湿式が多用されていますが、本業務ではわざわざ乾式についても記述しています。(④,⑤)
塗膜分析調査
・PCB含有量「低濃度PCB 含有廃棄物に関する測定方法」準用
・鉛含有量 JIS K5674:付属書A
・クロム含有量 JIS K5674:付属書B
「準用」がミソです。
本仕様書のポイント
①H鋼桁橋がメインである(架設年次が1966~1974他不明数橋)
②サンプリング場所ごとに2箇所採取を指定している
③関東地方で広く実施されている湿式での採取に限定していない
④採取後の塗装補修の詳細がない
⑤PCB分析方法を「準用」可としている
仕様書作成者の苦労が偲ばれる・・・
全ては「H鋼桁橋」が苦労の元です(泣)
H鋼桁橋の特徴は、
①膜厚が非常に薄い
②腐食が進行してまともな塗装面が少ない(特に古い架設年次)
が挙げられます。
つまり、「〇cm四方といった面での採取が困難である」ということを暗に示しています。
よって、
・剥離剤での採取は錆部分も試料として取り込んでしまい、その場合は分析値の正確性が担保できない
・腐食面が多ければ、湿式より乾式採取の方が現場状況に適している
・最低2箇所から採取しないと必要試料量が不足する
・面採取というより点採取となるため、塗装補修の必要性が疑問視される
・試料量が必要最低限以下となる可能性があるため、前もって「準用」可として試料量不足に対処する
という考えのもとに仕様書を作成したと推察できます。
発注者の意図が分かっても・・・どうやって見積もりすればいいの?
以上のことが分かっていたとしても、実際の積算をどういう考えのもとで実施したのか分かりません。仕様書の文面から察するに、担当者は対象橋梁の現状をある程度把握していると思われるので、仕様書の内容が現場状況とかけ離れないようにしているのが見受けられます。
ただ、入札金額を決める入札参加企業はたまったものではありません(泣)
発注者の意図をくみ取るかどうかで見積金額の上下幅が大きくなり、発注者の落札予定価格を大きく逸脱した価格で入札してしまう可能性がでてくるのです。
ホント、業者泣かせです。
発注者側にはもうちょっと意図が分かるような仕様書を作成していただけるよう要望いたします(笑)
追記 PCB含有量分析で「準用」可とするならば、鉛とクロムにも適用すべきだと思います。