「旅先の日常」に飛び込んでもらう。「SEKAI HOTEL」の「町工場体験付き宿泊プラン」
「ベストプラクティス」を「ベンチマーキング」する、という経営手法がある。
同一業務プロセスに関する最高で、参考とすべき事例であるベストプラクティスをベンチマーキング、すなわち自社の業務プロセスと比較分析して、業務効率の向上へとつなげる経営手法である。
ベンチマーキングの対象とすべきベストプラクティスは同業他社よりも、むしろ異業種にあることが多く、対象を広く求めてベンチマーキングをすることが望まれる。
ベストプラクティスは『ヒト』、『モノ』、『カネ』、『情報』、『知』といった経営資源の豊富な大企業に求められることが多いが、フットワークの軽い中小零細企業においても参考にすべき実務は決して少なくない。
そんなベストプラクティスのベンチマーキングとは少し違うかもしれないが、興味深い取り組みが東大阪で行われている。
「SEKAI HOTEL」の「町工場体験付き宿泊プラン」だ。
cf. 東大阪の「SEKAI HOTEL」に町工場体験宿泊プラン 工場で溶接・塗装を体験(東大阪経済新聞)
cf. 東大阪の町工場の体験宿泊プラン セカイホテル(日本経済新聞)
地域の空き家をリノベーションして客室に転換し、周辺の飲食店や銭湯と提携することでレストランや大浴場などホテル機能の一部を地域に分散させることによって、「旅先の日常」に飛び込んでもらおうとするコンセプトを掲げる「SEKAI HOTEL」。
東大阪市の「SEKAI HOTEL FUSE」の客室は町工場をイメージした内装で、ロビーや客室の照明や家具は東大阪市内の事業者と共同開発したとか。
このプランでは、溶接、塗装、組み立てを体験して棚かペン立てのいずれかを製作するほか、夕食・朝食、商店街での総菜食べ歩きチケット、銭湯の入浴等が特典として付いている。
なかなか入るきっかけのない町工場の体験は貴重で、興味深い。
新型コロナウイルス感染症の流行で旅行業界は大きな打撃を受けている。旅行業者、宿泊業者の中には破綻、廃業をしたところもある。
そのような厳しい環境の中でどのように生き残るか。
ベストプラクティスのベンチマーキングの活用など、これまでの常識、「当たり前」にとらわれない斬新な発想の転換が必要だ。
イノベーションを起こせるかどうかが存続の可否を分ける。