塩人【毎週ショートショートnote】

 私はかつて病気療養のため南国で暮らしていた。
 病室からの景色に飽き、海辺を散策した。地元では見かけない木々の緑の奥に真っ青な海が広がっていた。
 ある日、浅瀬を歩く妙な人物を見かけた。
 足首まで海水に浸かったその男はふんどし一丁だった。彼が私に手招きするので砂浜におりる。「君、どこか悪い」ドキリとした。「服脱ぎ、そこ寝る」有無を言わせぬ口調が私を砂浜に寝かせた。
「腕、胸、腹、塩盛る。動くな」
 奇異に感じたが私は従った。体の上に塩の山を築いていき、最後に男は手を合わせた。「終わり」その言葉で私は上体を起こした。塩がさらさらと砂の上に落ちていく。西日を受けた海面が輝いていた。
 その日の晩、医師と話した。
「それはしおんちゅだ。塩人。この島に伝わる守り神さ」
 その後の検査で私の数値は劇的に改善した。病が治ったのだ。家族は南国の気候のおかげと言うが、私には塩人がもたらした奇跡だとしか思えなかった。
 健康を取り戻した今も毎年この時期に南国を訪れる。だがあれから十数年、塩人を見かけたことはない。



※たらはかにさんの企画【毎週ショートショートnote】に初参加させていただきます。
【毎週ショートショートnote】『ショートショート書いてみませんか?』お題発表!6/18|たらはかに(田原にか)


【あとがき】
滑りこみですが、今週から参加させていただきます。

いつも楽しそうなお題やみなさまの作品をこっそり楽しませてもらっていました……!
なんだか新しいことに挑戦したい気持ちもあり、書いてみました。

そして、その難しさに愕然。。
約410字程度とのことでしたが、初稿は1100字オーバー。文字数感覚のなさを露呈しております。

結果、439字となりました。。少しまだ多い感じですが、、ここはまあ、開き直ってしれっと初参加…。。

それでは、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


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