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「ブザービーター」【ショートショート/140字小説のリライト】
このまま負ければ、俺の高校バスケは終わる。試合終了まで残り時間は5秒。わずかに1点だけ、俺のチームが負けている。互いのチームの選手10人がコート上を駆ける。バッシュの裏が床を蹴る甲高い音が激しく鳴った。
俺は試合終了のブザーと同時に得点を決めるブザービーターを狙って、ジャンプシュートを放った。高く、綺麗な弧を描いたボールは、吸い込まれるようにゴールの中へ。これでうちが1点リードに変わる。最終盤での大逆転に会場は沸いた。
残り2秒残ってしまったのでブザービーターとはならなかったが、これでほぼ勝利は確実だろう。
相手チームの選手がプレイを再開させる。ドリブルでコートの中央まで切り込んだところで、闇雲にボールを投げる。フォームはてんでバラバラ。ただ投げただけのシュート。
勝利を確信していた俺はゆっくりとボールの行方を追った。
試合終了のブザーが鳴る。と同時に、ネットが揺れた。
この日、一番の歓声が体育館に響いた。
※かつてのTwitterで投稿していた140字小説。140字以内はけっこう難しく、なくなくカットした箇所もかなり……。字数を気にせずにリライトした過去作をnoteにあげていってます。