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飲みものを飲むときの音ランキングは「ごくごく」が一位、「ぐびぐび」が二位、お客様がお探しの「じゅるりじゅるり」はランク圏外となっております。

最近、よく飲みものを飲む。
こう書くと、妙に感じる方もいるだろう。
「はぁ? 飲みものっていつでも飲むもんじゃん。それこそ空気を吸うように飲むもんじゃん。もんじゃは飲みもの、飲むもんじゃん」とお叱りの言葉が飛んできそうだ。

だが、私は昔からあまり飲みものを飲まないタイプのアンドロイドなのだ。水分を補給しなくても長時間の生命維持活動が可能となった時代に製造されたため、人間らしい振る舞いの一つとして「ふふふ」と微笑みながら紅茶のカップを傾けるというプログラムが一つICチップの中に組み込まれているだけなのだ。

思えば、子供の頃からそうだった。
そもそも喉が渇くという感覚すらわからず、自分から飲みものを欲することなどなかった。子供の頃に飲んでいたものを強いてあげるとするなら、理不尽に突きつけられた要求くらいのものだ。

そのせいなのか、私は汗をかかない子供だった。サッカーやマラソンなど、長時間走り続けても汗のひとつもかかない。それがなぜか、恥ずかしかった。額から垂れる光る汗に憧れていた。
ひょっとすると、水分を摂らないせいで乾燥しきっていたのかもしれない。そう考えると合点のいくこともある。子供の頃、指先と指先を擦り合わせれば星の砂が出てくるという魔法をよく使っていたのだが、結局、あれもただの乾燥のせいだったようだ。なぁんだ。

そんな私だが、最近は飲みものを口にする機会が増えてきた。
それは単純に、雨が降ると外に立ち、大口を開けて天を仰ぐというバイトのシフトに入る日が増えたというだけのことではない。自らの手でちゃんとグラスに飲みものを注ぎ、自らの手でちゃんとグラスを持ち、孫の手でちゃんと背中をかく。早く飲め。

よく飲んでいるもの。それはお湯だ。
ここで勘違いしてほしくないのだが、私がいつも飲んでいるお湯は決して風呂の残り湯ではない。我々お湯飲み族にとって、あれは高級品だ。頻繁に飲んでいると思われては困る。決して金持ち自慢をしたいわけではないのだから。

朝の目覚めとともに、白湯を一杯。
「あんた、じじいか」や「女子力高めか」といったツッコミが聞こえてきそうですが、朝の白湯、いいですよ本当に。体の隅々まで染み渡るようなあの感覚。指先どころか、爪の先。爪の先どころか髪の毛の先。染み渡って、染み渡って、気がつきゃ全身べっちょべちょ。ちょっと冗談っぽく聞こえるかもしれないが、本当にいい。朝の白湯。あさのさゆ。逆から読んでもゆさのさあ。は?

その他に、コーヒーも飲む。ほっと落ち着きたいときにホットコーヒーをちびちびと。暑いときの水分補給としてアイスコーヒーをごくごくと。
コーヒーはやはり香りがいい。馥郁たる香りというように、あの香りを嗅ぎたいがために仕方なく飲んでいる節すらある。“馥郁(ふくいく)”って言葉、コーヒー以外で使ってるの見たことある? ないない。馥郁たる香りは、コーヒーの専売特許なのだ。もはやホット馥郁にアイス馥郁。馥郁牛乳にしたっていいくらいだ。ほら、コーヒーって書くと長いじゃん? 四文字も使ってさ、総画数で言っても6画もあるわけ。それより漢字で馥郁って書いた方が……。

よく、人間は一日に2リットルの水を飲んだ方がいいと聞く。それから、人間は一月に2万円の追加収入があった方がいいと聞く。欲しい。
飲みものを飲む習慣がついてきた私は、早速2リットルチャレンジを開始した。お気に入りのドナルドダックのコップがちょうど200リットル入るので、百分の一くらい入れて飲めばいいのだ。簡単だ。そんなコップあるか。200mlの間違いでした。
となると、ドナルド10匹だ。

「となると」と「ドナルド」が偶然にも並んだ。こういうことが起きるときって、何かいいことが訪れる前触れだったりする。馬券を買ったら大当たり、穴を掘ったら埋蔵金、玄関開けたらサトウのごはんなんてことが起きるかもしれない。

いちについて、用意……バァン! 号砲とともにドナルドを一杯。続けざまにもう一杯。食事のときにももう一杯。気づけばなんだかお腹一杯。午前中のうちにもう二杯。
さあ、ここまで私は何リットルの水を床にこぼしてきたでしょう。

摂取する水分は水だけとは限らない。お茶を飲んだり、紅茶を飲んだり、あとはちょっとコンビニで缶馥郁を買ったり。

そんなこんなで、なんとか一日に2リットルを飲み干すことができた。その代償として、私がトイレに放った水分は5リットルを超えたとか超えてないとか。

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