スナイパーの意外な使い方【毎週ショートショートnote】

 ライフルを入念に整備していると、ボスに呼ばれた。
「優秀な狙撃手である君に仕事を頼みたい」
 私は頷く。
「わしの孫の運動会がある。最高の瞬間を写真に収めてほしい」
「……狙撃手の私が?」
「君の特技は何だね」
「もちろん狙撃です」
「違う。場所取りだ。敵を狙える最高の場所をよくわかっている。撃つだけなら誰でもできる。問題は引き金を引くまでだ」

 不本意ながらも校庭へ。くじ引きで入場順が決まっており、若い番号を引いた者からいい席がとれる。ボスの孫が引いたのは384番。クソガキめ。
 校庭を見渡し、北側の鉄棒の隣が絶好の撮影ポイントだと判断した。前方には黒い頭の数々。立っての撮影は御法度。後方の保護者様のご迷惑になる。
 私はカメラをかまえた。人と人の間を縫うように照準をあわせ、孫をとらえた。文句なし。
 撮影は完璧だった。邪魔な物は一切写りこまずに、正面から孫の顔が写っている。ただ、孫は目を瞑ったり、口が半開きだったりと変な顔ばかりしていた。
「……クソガキめ」



※たらはかにさんの企画【毎週ショートショートnote】に初参加させていただきます。
【毎週ショートショートnote】『ショートショート書いてみませんか?』お題発表!7/2|たらはかに(田原にか)



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