夏のこと
冷蔵庫の中ではペンギンが腐っていて、あいつのスカートの中と同じにおいがする。
優しい夏なんてどこにもなくて暑くて焦れてて暴力的で苦しくてみんな死んでるみたいな顔をして熱されたアスファルトに足をぺたぺたくっ付けながら歩いているね。
バカみたいにデカい入道雲がぷかぷかしていて空はとても呑気だと思うけど、いくら言っても夕立は待ってくれなくて結局空は呑気なんじゃなくてわたしたちをびっくりさせてくるだけだった。
妙な温度と妙な湿度にとっくに飼い慣らされてしまった夏。
冷えてないビールはあんまり美味しくないけど、冷蔵庫の中には腐ったペンギンが入っているから我慢しよう。
あいつとはぬるいビールで乾杯すればいいから。