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咀嚼

左腕の手首の傷は増殖をやめた。感情を咀嚼。咀嚼。咀嚼。
飲み込める形状になるまでひたすらに咀嚼。「いける」と思ったら一気に嚥下。
大抵胸のあたりでつかえるのがオチだが。感情の処理というのはとてもむずかしい。歯が立たない。立たない歯で咀嚼。滑稽。

わたしは文筆家ではない。故に文字を書くのは薄っぺらい紙と一本138円くらいの安いボールペンで良い。高級な万年筆なんかは要らない。
適当に言葉を連ねてゆく。これはわたしの感情の連続であり、何ら意味を持たない。誰かの心に言葉を刺そうとも思わない。人の心に言葉を刺すには己の全体重が必要だから。

髪が緑から茶色に変わった。春先の新緑から一気に冬の枯れ葉のようになってしまった。髪色タイムトリップ。ここには四季なんてない。
11個付けてたピアスも外した。完全に一般人。アイデンティティとしていた奇抜なわたしはもう居ない。残ったのはピアスホールとピザだけ。

ピザ屋で働く双極性障害の女。すべてが嫌になったら鎌にでも入って焼けてしまおうとおもう。尤もわたしが入れるほど釜は大きくはないが。

頭がぼんやりする。これは睡魔だ。午後11時。どうせ今眠りに就こうとしたところで布団に入った途端に睡魔は昇華されていってしまう。いつだって体はいうことをきかない。ひねくれている。心も、体も。

たまには本能に従え。天邪鬼なんだから。まったく。

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