地球規模の組織化トレーニングが開催される オーガナイズ・フォー・パワー
★111カ国から9500人が参加
2021年5月から6月にかけて、111カ国から9500人が参加した組織化トレーニングがオンラインで実施された。時差の問題を解決するため2種類の時間割が用意され、主催者は12ヶ国語の同時通訳が用意された。参加費用は無料であるが、10人以上で全6回のトレーニングに参加するという条件がある。
https://www.rosalux.de/o4p
2019年にこのトレーニングに参加した経験があった私は、このトレーニングの面白さを確信していたので、迷わず知り合いに声をかけた。結果として22人の日本チームが集まった。
主催したのはドイツにあるローザ・ルクセンブルク財団で、主任講師はカリフォルニア大学バークレー校の教授を務めるジェーン・マカリーヴィ氏である。彼女は労働組合のオーガナイザーの経験を持つと同時に、アメリカやヨーロッパの優れた組織化の取り組みを教訓化した書籍の著者としても知られる。2018年から2019年のアメリカ教員ストは大きな盛り上がりを示したが、そのコアメンバーは、彼女の「ノー・ショートカット」(近道はない)を読んで、自らの職場に応用して労働組合を内部から変革していったのである。
https://onl.la/ayh9X6D
★職場の「権力構造」の包括的な分析
講座の鍵となる概念は、パワー・ストラクチャー・アナリシス(権力構造分析)である。労働者がその要求を実現するためには、職場の力関係を変えなくてはならない。国家や地方における権力構造の分析というのは、社会学の分野で以前からなされてきたが、従来の権力論はエリートが主体となり、一般の人(労働者)は客体として一括りにされてしまうことが多かった。ジェーンは、それを一歩進めて、職場の内部、労働者集団の中にも権力構造があり、その構造を分析しなければ職場でスーパーマジョリティを実現することはできない、と提言する。
そのため、第1回の宿題は、ある職場を題材にそこでの権力構造分析を行い、職場のリーダーを特定するということが課題となった。リーダーと活動家とを区別するのだ。
★言葉づかいにもこだわる
第2回は、意味論のトレーニングであった。これは平たく言えば、組織化を行うさいの言葉づかいのトレーニングである。例えば、「集会に参加してくれてありがとう」という言い方はしない。それは参加者と組合とが他者であることを意味するからである。そこで、これにかわる言い方を考えるのだ。たとえば「あなたが参加してくれてとても嬉しいよ!」といったふうに。
同じことを述べるのでも、その表現の仕方によって話し相手と労働組合との人間関係に差が現れる。これは認識論を組織化に応用したものと言える。
第3回と第4回は、一対一の対話のトレーニング、第5回と第6回は、キャンペーンの計画についてのトレーニングであった。
★プロのオーガナイザーの対話をみて、練習
私がとくに気に入ったのは、一対一の対話のトレーニングである。
今回の講座は、世界各地で組織化の最前線に立っているオーガナイザーが複数(たしか8人ほど)、ファシリテーターとして参加してくれていた。ファシリテータが我々の目の前で、組織化のための対話の実践を示してくれ、さらにそのふりかえり(よかったところ、悪かったところをお互いにコメントし合う)をしてくれた。同じトレーニングを二週間にわたって行ったのであるが、2回目のときには対話の質が向上していることが実感できた。
今回のトレーニングで私たちが行った課題の数々は、日本語訳にしてウェブサイトで無料公開している。関心のある方はぜひ覗いてみてほしい。
Organize for Power の課題(無料でダウンロード可能)
職場を変えるワークショップ
https://laborrights.stores.jp