ボストン市はAIを活用し交通渋滞を5割削減
case|事例
ボストン市は、2023年に世界で8番目に渋滞が深刻な都市として評価されており、交通円滑化がひとつの重要な都市課題となっている。現在、ボストン市は交通円滑化を目的に、Googleと協働で特に深刻な混雑エリア内の信号制御をAIを用いて改善する取り組みを行っている。
この取り組みではGoogleの「Green Light」というソリューションが用いられている。Green Lightは、AIを用いて交通流のパタンをモデル化し、渋滞緩和や排出量削減の観点から望ましい信号現示のタイミングを生成する。Googleは、5カ月間にわたってGoogle Mapから取得した運転傾向を用いて、市内数百の交差点を対象にAIによる解析を行い、信号現示の変更パタンを生成した。これまで、3つの交差点で、生成された提案のうち4つの現示パタン代替案が適用され、交通流への影響が評価されている。
現示パタンの代替案の検証にあたっては、まずボストン市運輸局が、提案された現示パタンを安全性、実現可能性、有効性の3つの観点で評価し、導入可否を判断し、選ばれた現示パタンが実際の交差点で適用された。その後、Green Lightが交通流への影響を評価し、ボストン市へ報告された。対象地のひとつの交差点では渋滞が5割削減されるなど、目覚ましい効果が得られている。またGreen Lightの全世界での導入実績の平均でも、1割の渋滞緩和効果が得られている。
ボストン市の担当者は「交通流の傾向にあわせて必要に応じて現示の変更を試みることができるこの方法は現場にとってハードルが低く、交通流への影響評価も自動化されるているため事後評価も容易に実施できる。」とコメントしている。
insight|知見
以前、ラスベガスがAIを用いて歩行者の交通量と歩行速度をもとに青現示のタイミングを調整するという記事を紹介しましたが、AIの都市計画分野への適用において、交通制御はとても相性が良いのではないかと思います。
現在の信号制御でも交通量に応じた制御方式が導入されていると聞いたことがありますが、時々刻々と変化する交通流に対して、典型的なパタンを見つけ、それにあわせた現示を変更するという制御を想定すると、AIに計算スピードはかなわない気がします。福岡をはじめ日本でもボストンのような信号制御の高度化の実証が始まるといいなと思います。