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持続可能な観光目的地を目指すシンガポール

case | 事例

シンガポール政府のインバウンド観光で目指すビジョンは、小さなフットプリントで大きな体験ができる「自然の中の都市」になることである。そのためには、公共部門と民間部門の強力なコミットメントが必要であり、さらに観光関係者からの支援も必要になる。今年の年初に、シンガポールはグローバル・サステナブル・ツーリズム協議会(GSTC)の基準に基づき、持続可能な目的地として認定されたが、取り組みはまだ緒についたところである。

シンガポールの観光業界は、国家レベルのシンガポール・グリーン・プラン2030に示されている持続可能性目標に貢献すべく、業界の持続可能性ロードマップが作られている。ホテルの雨水利用、生ゴミの堆肥化、持続可能な建設や改装、使い捨てプラスチックの廃止といったグリーン化が業界の努力により進められているが、シンガポール政府観光局は、長期的な持続可能性戦略を策定し、生産性と競争力を向上させる企業に資金援助を行う持続可能なツーリズムプログラム(TSP)を立ち上げている。

TSPを通じて、AIを搭載したトラッカーを使ってすべての食品廃棄物を測定するスタートアップ企業を支援した事例がある。このトラッカーは、顧客が何を食べていないかをホテルのシェフが把握できるようにすることで、食品廃棄を減らすための工夫に役立っており、一部のホテルや航空会社は食品廃棄を最大40%削減することができた。その他、GSTC認証プロセスでは文化の持続可能性についての評価もあり、TSPを通じてシンガポールの文化遺産を紹介するビジター・エクスペリエンスの開発支援や大規模イベントの後押しをしている。


insight | 知見

  • GSTCについて無知でしたので、調べてみると日本でも「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」という基準をGSTCに準拠して2020年に策定しているようです。ガイドラインに沿って取り組んだ地域やDMO(観光地域づくり法人)はJSTS-Dのロゴマークの申請ができるようです。

  • 観光の持続可能性というと、ホテルの使い捨て備品の廃止や節水省エネといった活動に目が行きがちですが、記事にあるように食品廃棄物を減らすためのソリューションを開発するスタートアップへの支援や、来訪者に文化を伝えるためのビジター・エクスペリエンスの開発支援なども確かに持続可能な観光を進める上で大切だと感じました。これらの支援は都市の行政でできることでもあると思います。