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シカゴ都心に変化をもたらすラサールストリートの再開発計画

case | 事例

シカゴのラサールストリートの再開発計画は、シカゴ市の計画・開発局(DPD)と交通局(CDOT)が主導し、歴史的な金融街であるラサールストリートを活性化させることを目指している。計画の基本的な方向性は、オフィス中心の地区から住居、ビジネス、文化施設などを含む多用途の環境への転換である。

再開発計画は、包括的な11の指針に基づき、包摂性、持続可能性、経済的活力が強調されている。住宅に関しては、160万平方フィート(約15万平米)以上の空きオフィススペースを1,423戸の混合所得アパート(3割の住居は地域の所得中央値の約60%の所得世帯向けのアフォーダブル住宅)に転用することが計画されており、プロジェクトには2億5,000万ドル(約390億円)の増加税収財源措置(Tax Increment Financing, TIF)の導入が想定されている。また、レストランやビジネスの拡張のための最大500万ドル(約7.8億円)の市の助成金が、小規模ビジネス改善基金を通じて配分されることが想定されており、5つのレストランの拡張と取引所ビル内への新しい博物館の設立を支援する。これらの措置により、ラサールストリートがより魅力的で活気のある場所になることを目指している。

公共空間の改善も計画の重要な要素で、新しい景観設計、公共アート、照明の強化が計画され、特に夜間に通りが安全で魅力的な場所になることを目指している。ラサールストリートを24時間稼働する地域に変えることが目標であり、創造的な照明、イベントプログラム、拡張された歩行者空間を通じて夜間の活気を高めることが計画されている。交通の接続性も重視されており、既存の公共交通機関へのアクセスを強化し、歩行者、自転車利用者、公共交通利用者にとってより通行しやすい道路にすることで、ラサールストリート、シカゴリバーウォーク、市庁舎などの主要な市民空間とのシームレスな接続を目指している。ラサールストリートにはシカゴの象徴的な建築物が数多く存在していることから、市の戦略は、これらの歴史的なランドマークの保存と現代の都市計画要素の統合を両立させ、シカゴのダウンタウンに新たな活力をもたらし、住民、ビジネス、観光客にとって魅力的な場所にすることを目指している。

insight | 知見

  • 都心ビジネス街を住居を含む複合用途に転換していくことは、コロナ期以降オフィス需要が減ったことを契機にしたトレンドです。この記事にある計画の通りに進めば、シカゴの都心には今後数千人の居住者が生活する場に変わっていくので、確かに都心の雰囲気は様変わりすると思います。

  • ビジネス街は生活者向けのサービス基盤が弱かったり、小中学校が立地していなく教育環境が悪かったりすると思いますので、都心の複合利用転換は都市の総合的な政策がセットで必要になりそうですね。