英ケンブリッジは合意形成が図れず混雑税の導入を見送り
case|事例
英ケンブリッジは、混雑税の導入に向けてステークホルダーとの協議を重ねていたが、合意に至らず導入を見送る。市議会、郡議会、地元企業、教育機関などで構成されるグレーター・ケンブリッジ・パートナーズ(GKP)は、混雑緩和や大気汚染の改善などを目的に5ポンド(約910円)の混雑税の導入を提案していたが、政治的な合意が欠如しているとして、混雑税の導入を次のステップに進められないと判断した。混雑税の提案は2022年に行われており、7:00から19:00の間に特定のゾーンへ進入する自動車へ5ポンド(約910円)の課金を行うことを基本案としていた。その後、市民などからの意見を踏まえて中小企業や低所得者への割引や課金対象時間の変更などを行ったが合意には至らなかった。混雑税の実施によって、課金による税収が年間2,600万ポンド(約47億円)と見込まれており、それを原資にバスサービスの改善や歩行者・自転車関連のインフラ整備を実施することを目論んでいた。
GKPは、混雑税の導入は見送ったが、混雑や大気汚染、気候変動などへの対策は依然として優先的な都市課題であり、都市の成長と共に悪化すると考えられるため、早期の改善を行う必要があると考えている。今後は、バスのサービス改善や鉄道の整備、歩行者・自転車ネットワークの整備などによる移動の不平等の解決に焦点をあて、自動車以外の交通手段のサービス向上によって混雑緩和と温暖化効果ガスの削減を進める。市民に対する意向調査によると、回答者の58%は混雑税の導入に反対していたが、70%はバスの拡充に賛成を表明していた。公共交通のサービス改善などにあてる財源確保や市民の行動変容に対する根強い課題が浮き彫りになっている。
insight|知見
市民など多様なステークホルダーが参画した意思決定はなかなかに難しそうです。社会が成熟すればするほど、多様性や公平性、平等性などが求められます。それは望ましいことですが、意思決定はとても複雑になりそうです。特に、環境対策など、従来の政策から非連続に新しい政策の質が変わるときは、意見も混沌としてきそうです。
ルソーの言う社会全体の共通善を志向する「一般意思」的なものがあるとすれば、どんなプロセスを経れば一般意思に近づけるのかななどと考えてしまいました。環境にとって大切であることは長期的な目線でみれば理解できるけど、日々の生活負担の方が実感を持って感じてしまうというジレンマをどう解消していくのか、日々の習慣をどう変えていくのかのようなことも調べてみたくなりました。