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マドリード高等裁判所は低所得者への影響を懸念してLEZの停止を判決

case|事例

マドリード高等裁判所は先週都心の3か所のLEZ(Low Emission Zone:低排出ゾーン)を撤廃する判決を下した。今回の判決の主要な論点のひとつは経済的な格差で、低所得者にとって新車購入は困難であり、所得水準による制約の偏りが発生していると判断の根拠を示している。また2021年に制定された持続可能なモビリティに関する条例についても、LEZ等で制約をかけた際の便益と費用のバランスを制定時に適切に評価しておらず、社会的・経済的な弱者への影響を最小化しつつ同等の排出削減効果を得るための代替案の検討を市が怠ったと強調している。

マドリード市議会は今回の判決を不服とし控訴の準備を開始している。また低排出戦略「Madrid360」に批准する新たな条例の制定準備も進めている。市長室は、裁判所の決定に対し、LEZの効力は未だに有効で、排出基準を満たさない車両に対しては引き続き課金がされると主張をしている。また今回の判決を受けて環境性能車の購入助成制度「Cambia360」も見直す予定。

マドリードのLEZ導入の混乱は政治的な争いの帰結ともいえる。2018年に2000年以前に登録されたガソリン車と2008年以前に登録されたディーゼル車を対象にLEZへの進入が禁止された。その際に電気自動車や公共交通、一部の配達車両はLEZの対象から除外され、LEZ内の市民と来訪者には通行証が与えられた。しかし、その後、LEZは停止と再会を繰り返し、紆余曲折を繰り返していた。

insight|知見

  • 確かに現在所有する自動車の環境性能のみで制約をかけるのは社会的厚生に悪影響を及ぼしそうです。そのために新車購入の補助をLEZの導入と併せて導入しているのでしょうが、低所得者層は消費財の購入を優先してしまうように思います。脱炭素やカーボンニュートラルの家庭部門での取り組みは、社会的な厚生や社会的な公平性なども併せて考えなければなりませんね。