自動運転車の普及に向けた準備が必要
case | 事例
2024年5月に英国の自動運転車法が制定された。同法は多くの詳細を二次立法に委ねているが、英国運輸省のプレスリリースによると、早ければ2026年にも英国の道路で自動運転車の走行が見られる可能性がある。2026年という非常に近い将来までに、諸々の規制やインフラが整備される可能性は低いと考えられるが、ロンドンではすでに、クイーン・エリザベス・オリンピック・パークやウーリッジで自動運転車の試験走行が行われており、サンフランシスコなど、ロンドンと同様に都市環境が複雑な米国の複数の都市でもWaymoの自動運転タクシーが一般的になっている。つまりロンドンにおいて、現実としての自動運転環境に対して準備が必要である、ということだ。
自動運転車の利点としては、事故や渋滞の減少、価格や身体的条件によって移動が制限されている人々に対する移動手段の提供などが挙げられている。一方で、より健康な歩行や自転車利用の減少、都市のスプロール化、渋滞や汚染の増加、社会的交流の減少、公共交通機関の存続危機などの懸念も指摘されている。ロンドン交通局は、自動運転車の普及について、2019年の見解ではかなり慎重な見方をしており、市長の戦略的優先事項である「2041年までに移動の80%を徒歩、自転車、公共交通機関で行う」という目標を目指している。現時点では、有人のタクシーやライドシェアを利用するよりウェイモのタクシーを利用する方が時間的にも金銭的にも高くつくが、マッキンゼーの予測によると、2030年には米国では1マイルあたりのコストが自家用車を利用するのとほとんど変わらなくなるという。コストが下がることで、手軽に利用できて料金も安い自動運転車は、徒歩や自転車、公共交通機関の利用を好まない人々、あるいはそれらの移動手段を利用できない人々にとって非常に魅力的であることは間違いないだろう。
自動運転車の普及に伴い、都市の移動手段や建築環境、公衆衛生などへの影響を管理するための政策が必要とされる。例えば、道路利用料金を導入したり、公共交通機関、歩行、自転車通行を推奨するエリアでの自動運転車のコストを高くするなどの対策が考えられる。自動運転車の普及により、個人所有の車が減少し、道路スペースが解放される可能性も考慮すべき都市の課題である。また、交通渋滞緩和には自動運転車の駐車スペースを確保したり、空車の状態での運行を制限し、充電施設や待機スペースを備えた駐車ハブの整備も求められる。さらに、人々の健康の観点から、利用者が車をピックアップするために歩くことを奨励する政策も考えられる。20世紀の都市が自家用車によって形作られたように、自動運転車が普及すれば21世紀の都市にも大きな影響を与える可能性がある。その影響をポジティブなものにするためには、早急な政策対応が必要だと考えられる。
insight | 知見
このコラムの最後に書かれているとおり、20世紀の都市が自家用車の普及によって形成されてきたように、今後の都市は自動運転車の普及によって作り変えられる可能性がある、ということは納得できます。
自動運転車や空飛ぶモビリティが将来の都市の形を変えていくことを想像すると、未来の都市の進化にワクワクしてしまいます。