ソルトレイクシティの社会包摂を意識した新たなTOD開発
case|事例
ソルトレイクシティ再開発庁(RDA)はリオグランデ地区の再開発に関する将来ビジョンと実行計画を発表した。今回構想が発表された再開発は公共交通指向型開発(TOD)となる予定で、都心西部のアートやコミュニティ・ウェルネス、経済成長の拠点となることを目的としている。ビジョンには地上階を小売りやメーカーズスペースとした住宅や新しいホテル、非営利活動用のスペースなど、多様な用途を混合させたウォーカブルな地区が示されている。
今回のビジョン策定は、世界的な設計会社「Perkins&Will」と協働で行われ、 RDAの所有する11エーカー(4.5ha)の土地の再開発のロードマップを示している。開発対象地はユタ州でも有数のマルチモーダルの拠点を含んでおり、地域のアイコンである歴史的なリオグランデ車両基地とも隣接している。ソルトレイクシティ市とユタ州は、この開発をTODのモデルを示す貴重な機会として認識している。
今回の再開発は、市長直轄の「Tech Lake City構想」や市が整備する5.5マイル(約8.9km)の直線状公園「Green Loop」など、市の他の政策とも連動する。Tech Lake City構想は、市内で成長するライフサイエンス産業のためにインキュベーションやラボ、オフィスなどの機能を充実させようとするもの。
今後、RDAは提案依頼書(Requests for Proposals:RFP)を受け付け、開発の実施に移行していく。RFPではリオグランデ地区の課題を解決し、差し迫ったニーズに対応できるよう下記の項目が優先される。
気候に配慮したデザイン
ファミリー世帯や高齢者に配慮したアフォーダブル住宅
地元資本や地元の担い手のための手ごろな賃料の商業スペース
教育や労働力開発の機会の創出
insight|知見
今回の計画では、気候変動対策や住宅不足などの社会課題に加えて、地域の経済循環や社会包摂などが意識されていますが、その解像度が高くて驚きました。
日本の用途制限は幅が広くて解釈の余地があります。創意工夫が効くというメリットと同時に、賃料負担力の高いありきたりな用途しか入らないというようなデメリットもありそうです。
福岡の都心部では再開発が目白押しです。九州大学の箱崎キャンパス跡地でも優先交渉権者が決定しました。これらの開発でも社会課題を解決し、これらから数十年の街の価値を高めるような用途が低層部中心に入ってほしいなと思います。