仏モンペリエは住民を対象に公共交通を無料化
case|事例
モンペリエ都市圏は、排出量の削減とアクセシビリティの強化を目的に、12月21日から住民を対象に公共交通を無料化する。住民はアプリ等からバスとトラムが無料となるフリーパスをダウンロードすることができる。非居住者や観光客はこれまでどおり運賃の支払いが必要となる。都市圏のモビリティ担当責任者は「移動は権利であり、無料化を通じて住民へ利益提供できるように貢献したい。」と述べている。
モンペリエ都市圏は、無料化の本格実施に至るまでに2回の実証を行っている。いずれも18歳以下と65歳以上の住民を対象にしており、1回目は平日限定、2回目は平日まで拡大して効果の検証を行っている。
無料化にかかる財源にはフランス国内の11人以上の従業員を有する企業から徴収されている税金収入が充てられる。この税金は地方自治体のモビリティプロジェクトの財源に充当することを目的に徴収されている。モンペリエ都市圏の経済開発は、運営費の1.1億ユーロ(約170億円)の確保を可能にすると見込まれている。これは全体の収入の30%を占めている運賃収入を補えるくらいの水準となる。
モンペリエ都市圏では現在28万トリップもの自動車トリップが生成されており、道路交通からのCO2排出量が全体の40%を占めている。今回の無料化によって、住民の公共交通への印象を変え行動変容を促すことで、自動車利用習慣を軽減したいと考えている。また、モンペリエ都市圏は交通環境の改善も併せて進めてきている。これまでトラム建設やバスサービス改善をはじめとする低炭素モビリティに15億ユーロ(約2,330億円)を投資しており、今後も交通環境の改善への投資を続ける予定としている。
フランス国内では43の市と町で公共交通の無料化が行われているが、その多くは15万人以下の規模となっている。モンペリエ都市圏の中心都市であるモンペリエ市は人口約30万人で、公共交通の無料化を実施するフランス国内での最大の都市となる。
insight|知見
フランスは「交通権」が法律の中で明文化されていることで有名ですが、今回のモンペリエの取り組みも交通環境の改善に対して着実に投資を続けていることが伺えます。またCO2を削減し気候変動に対応しようという明確な政策意図もあって素晴らしいなと思いました。
フランスは、交通権を確保するために、きちんと財源のことも考えていて、運賃収入だけで公共交通を維持するのではなく、社会で支えていくという方針をとっています。
今回のモンペリエの無料化も企業からの目的税収を財源としており、持続できるスキーム設計がなされています。翻って日本の公共交通の無料化やこども割引などはイベント的になっていないかとか、増収効果が測定できないのに限られた民間事業の利益から財源を絞り出していないかなど、考えさせられます。
輸血的補助などで公共交通経営を延命させるのではなくて、根本的な経営改善を考えたいですね。