パリは6万台分の駐車場を緑に転用
case|事例
パリは、先週、2030年までに6万台分の駐車場を緑に転用するという野心的な目標を発表した。この目標は、気候変動対策のために策定された「2024-2030 Climate Plan(気候計画2024-2030)」に盛り込まれている。この計画では、「よりはやく、より公平に、より地域密着で」という表題の下、進歩を加速させ、環境にやさしく、異常気象に強靭で、歩行者にやさしく、自動車の少ない都市を実現することを約束している。
この計画では、2030年までに300haの緑を新たに創出することを目指しており、2026年までにその10%を整備するとしている。駐車場の緑の転用は、その一部に位置付けられており、具体的には路肩の路上駐車スペースを保水性の高い花壇や街路樹に置き換えていく。
また、計画では、緑の創出だけでなく、包括的な気候変動対策が示されている。熱波対策では、20区それぞれで「オアシス広場」と名づけられた木々やガゼボで日陰を創出する広場が整備される。また、1,000棟の公共施設で屋上の遮熱化が施される。近年の熱波が、多くの住宅やオフィスでいまだにエアコンが設置されていないパリの脆弱性を明らかにしており、熱波やヒートアイランドの対策は優先順位が高い。空間の整備以外にも、生活習慣や社会通念の見直しも含まれる。
歩行者優先化はさらに加速される。20区の中心部でそれぞれ歩行者専用空間が創出されると共に、ベリフェリーク大通りは公共交通と相乗り専用の走行空間が整備され、制限速度も50km/hに引き下げられる。
insight|知見
この記事を読んで、数年前のシンガポールで、彼らが都市の政策を「Garden in a City」から「City in a Garden」に変えると聞いた時の衝撃を思い出しました。パリやシンガポールだけでなく、明らかに世界中の都市で都市計画における緑の重要度が高くなっています。
翻って福岡はどうでしょうか?都心の森1万本プロジェクトなどが打ち出されていますが、街を歩いて緑が多くなった印象はまだありません。むしろP-PFIや再開発で緑は人工物に置き換えられているような気もします。SDGsのバッジをつけるだけではなく、また経済合理性や表層的な見た目の良さだけでなく、自然との共生や都市の持続可能性など本質的なことを考え、戦略性をもって取り組みたいですね。