バルセロナは市内の駐輪台数を30,000台へ拡大予定
case|事例
バルセロナ市は、現在、駐輪場インフラの包括的な見直しを行っており、将来の供給台数を30,000台に拡大することを計画している。その背景に、自転車の普及にはインフラの課題克服がカギであるという認識がある。
バルセロナ市は、これまでの交通政策の失敗のひとつは安全な自転車駐輪場の確保に対するポリシーがないことであると考えている。特に、個人所有の自転車を駐輪する方法がない。電動アシスト付自転車は、将来の持続可能なモビリティを支える重要な手段であるが、その普及にも安全な駐輪が欠かせない。そのため、今後も自転車が有効な交通手段であるためには、緊急的に駐輪台数を増やす必要があると考えている。見直しの中で、地下駐輪場や公共交通の結節点のレビューも行っており、地下駐車場に現在1,000台分ある駐輪スペースを今後29%増加させようと考えている。他にも法定速度を守らせることや男女間の利用格差の是正なども克服すべき課題として認識されており、テクノロジーの活用による解決などを模索している。
バルセロナは10年にわたって自動車空間を人に配分しなおし、人間中心の都市への再編を進めてきている。中でも、スーパーブロックは世界の耳目を集める施策となっている。スーパーブロックは非常なシンプルで、自動車を一方通行にして駐車スペースを人に割り当て直すだけだが、自動車の利用を制限するということに対しては感情的な反発がある。そのため、人間中心の都市への再編には政治的な困難がつきまとう。スーパーブロックは住民に人気もあり、世界的な注目を集めているが、議会は昨年度新規の建設を中止する決定を行った。新政権はスーパーブロックに対する予算を割り当てていない。自動車中心の政策から自転車や歩行者を中心とする政策への転換をどう政治的に意思決定していくのかは課題である。
insight|知見
20世紀の後半に新たな都市のモデルとして注目を集めたクリチバも政治的なリーダーシップで栄光を手にしたものの、その一方で対立する会派への政権交代などでさまざまな困難に直面してきたことを思い出しました。
記事の中で「都市計画を政治的な観点から調整してはいけない。」というバルセロナ市の担当者のコメントが載っていますが、じゃあ誰がどう意思決定するのかというのは答えがないですし、やはり民主主義社会では政治的な意思決定から逃れられないのではないかと思います。社会的な慣習や規範を変えるには長い時間を要しますが、そこにどう関与していくかを考えないといけないなと思いました。