ロンドン・ウォータールー駅が画期的な鉄道貨物ターミナルへ
case | 事例
ロンドンの持続可能な都市開発を目指す非営利団体クロス・リバー・パートナーシップ(CRP)はロンドン中心にある英国最大の鉄道駅ウォータールー駅に画期的な貨物ハブを設置する計画を発表した。CRPは英国の鉄道事業者ネットワーク・レールと連携し、ネットワーク・レールが管理する英国各地の駅資産の活用とともに、ウォータールー駅の鉄道貨物利用増に関する調査を交通コンサルタント会社に発注した。
CRPは「ウォータールー物流ハブは、ロンドンの経済と環境の持続可能性の双方にとって画期的なものになる」と声明で述べている。ロンドンの厳しい環境規制を考慮し、CRPは、ハブからの往路輸送はすべて、電動カーゴバイクを含むエコな輸送手段を使用することを構想しており、これにより、騒音公害の低減だけでなく、ロンドンのCO2排出量を年間最大2,500トン削減可能性という。現状急成長している宅配便・エクスプレス・小包市場において、鉄道貨物を使う割合はわずか1%であることに切り込み、専用貨物列車の導入とカーゴバイクによる輸送の仕組みを構築する。
CRPはもともとロンドンのテムズ川ミレニアム・ブリッジのような川をまたぐインフラプロジェクトを実現するために設立された官民パートナーシップであるが、その後外部資金を活用し都市再生プロジェクトを幅広く手がけるようになった。ウォータールー物流ハブでは、ネットワーク・レールの他、自治体や主要な利害関係者と連携して取り組んでおり、英国政府も資金提供している。ウォータールー駅で2024年初頭に開始が計画されている貨物輸送は、クリーンな道路貨物に焦点を当てた運用から始め、その後より大容量の鉄道貨物に取り込む計画である。
insight | 知見
都市の環境規制によって、新たなビジネスモデルやインフラ基盤の更新を促す事例として興味深く記事を読みました。日本は”2024年問題”の文脈で、トラック運輸の代替として鉄道や船舶へのモーダルシフトが議論されていますが、中央省庁や物流事業者だけの問題ではなく、都市の持続可能性や環境政策としてどのように物流を最適化していくかを考えるタイミングでもあると思います。
記事に出てくるCRPについて始めて知りましたが、官民パートナーシップが外部資金を獲得して都市再生プロジェクトを手掛けていく、というコンセプトは、福岡をはじめ全国に作られている官民パートナーシップの一つの展開のありかたとして参考になるのではないでしょうか。