都市の緑地は想像以上に有益であるとの研究結果
case | 事例
オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学(UNSW)生物地球環境科学部の研究者らは、世界の都市にある人工的に造成された緑地の土壌がどの程度機能しているかを調査し、自然の生態系との比較を行った。研究によると、人工的な都市緑地は、これまで考えられていた以上に環境に良い影響を与えているとのこと。
研究では、シドニー、マドリッド、北京、スウェーデンの大規模な公園を含む世界中の56カ所を調査し、土壌の健康状態を示す様々な指標を用いて自然環境と比較した。都市の公園は人工的に建設されたもので、土地は造成され、施肥もされていることから土壌は劣化しているとの仮説を持って研究に取り組んだが、測定した23項目の土壌健全性指標のうち、17項目は統計的に自然環境との有意差は見られなかった。また、全リン、保水力、透水性、植物被覆、栄養捕捉菌類、クモ類の多様性といった項目は、都市部の緑地が自然環境の平均よりも優れていた。
同研究チームは、都市の緑地がさまざまな重要な機能を提供できることを証明できたと述べており、自然環境ほどではないが、都市の緑地が過去の研究で報告されたよりも自然環境に似ていることが明らかになったとしている。また、より機能的な緑地を作りたいと考えている自治体や都市計画者にとって重要なことは生物多様性で、異なる種類の植物が異なる種類の微生物を保有し、それら微生物が土壌に対して異なる働きをすることによって、有機物を分解しやすくしたり、二酸化炭素を吸収しやすくしたりしていると強調している。
insight | 知見
先日、九州のある地域で長期間取り組んできた果樹栽培のプロジェクトが中止になったのですが、その意思決定に影響を与えたのが土壌分析の結果でした。農業にとって土づくりが非常に重要であり、土壌の良し悪しは経済的な作物の事業化に大きく関係することを目の当たりにしました。
逆に都市の公園の土壌は全く重要性を感じていませんでしたが、この記事を読むに想像以上に大事なのかもしれないと感じました。都市内の公園でコミュニティガーデンを作る動きや、コミュニティコンポストを設置する活動は、心身の健康やエコロジー以外にもメリットがありそうですね。