シアトル市は今後20年間の新たな交通計画を策定
case|事例
シアトル市議会は、今後20年間を計画期間とする新たな交通計画を全会一致で承認した。この計画は、シアトル市交通局と市長室、市議会が協働し、2年かけて策定された。
新たな計画では、街路や歩道、公共空間の将来ビジョンを示すと共に、公共交通をより高頻度に運行するためのサービス改善や、バス専用レーンおよび自転車走行空間の拡張、80にもわたるインフラの改善ポイントなどを提案している。インフラの改善ポイントには、将来のLRT駅の整備に向けた準備や老朽化した橋の改修、危険性の高い道路での安全性の改善などが含まれる。また、計画の実現に向けて81ものプロジェクトがリスト化されている。
また、計画全体の指針として、安全性や公平性、持続可能性、モビリティと経済活力、居住性、維持管理、近代化などの項目で目標が設定されている。
計画実現には財源の確保が要となる。2015年に9年間の時限で承認された「Levy to Move Seattle」という交通賦課金制度が、今年失効するため、市長は今夏に新たな賦課金制度案を有権者に提出する。この案が承認されれば、13.5億ドル(約2,130億円)の財源が確保される見込み。
insight|知見
シアトルは、公共交通のサービスに限らず、インフラ整備や安全対策に至るまで、総合的な交通計画を策定しています。また、目標も経済活力や公平性など多岐にわたる項目で設定されています。
現在、福岡市でも新たな交通基本計画を策定しようとしていますが、たぶん運転士不足への対応や生活交通の確保が議論の中心になっているのではないかと思います(これは福岡に限らずですが)。
課題への対応ではなく、将来に向けた計画ですので、限られたリソースをどう配分するのか、また足りないリソースを新たにどう補うのかということを、定量的な指標をもって、経済や社会まで含めた幅広い視野で議論してほしいなと思います。
また、ざっくりと調べただけですが、記事中にあるシアトルの交通賦課金制度も面白い制度だと思いました。どうやら固定資産税として交通関連の財源を目的税的に徴収する仕組みの様ですが、計画と実行に必要な財源調達をセットで議論している点が素晴らしいなと思います。