シティ・オブ・ロンドンの緑地は年間1.3億ポンドもの価値をもたらす
case|事例
Natural Capital Solutionは、シティ・オブ・ロンドンのオープンスペースがもたらす公共的な価値を試算したレポートを公表した。オープンスペースがもたらす公共的な価値として、大気の質やウェルビーイング、健康、レクリエーションなどが想定され、それらの価値を経済的な価値に置き換えると年間1.3億ポンド(約251億円)に及び、50年間の累積価値を現在価値に直すと36億ポンド(約7,130億円)になると試算されている。また費用便益比は87.7と非常に投資対効果が高いことも示されている。
おおよそ1.6km四方の面積をもつシティ・オブ・ロンドンの地区内には、公的に管理されるオープンスペースや緑地が180か所あり、年間2,100万人の来訪者が休憩場所やレクリエーションの場所として便益を享受している。また、それらの点在するオープンスペースや緑地が生物多様性の確保にもつながっている。さらに緑地にある計58,000本の樹木が毎年16,000トンものCO2を吸収しているとも推計されている。
これらの緑地はシティ・オブ・ロンドンの気候変動対策にも重要な意味を持つ。シティ・オブ・ロンドンはそれ自体の事業で2027年までにネットゼロを、地区全体では2040年にネットゼロを達成することを目標にしている。
シティ・オブ・ロンドンの緑地は、ロンドン大火や第二次世界大戦の復興の過程で生まれ、それを育て、維持するために、継続的に投資が行われてきた。現在も、フィンズバリーサーカスとジュビリーガーデンで生物多様性の確保と気候変動に対するレジリエンス強化を目的とする大規模な投資が行われている。
insight|知見
明治神宮に代表されるように、かつての日本の都市計画はとても緑を大事にしていたように思います。定禅寺通りのケヤキなど、戦災復興で植えられた街路樹も大切に維持されています。
一方で、管理という名目で街路樹は緑陰ができないくらいまで刈り込まれていたりと、緑に対する価値の認識はどんどん減衰しているようにも感じられます。
これから地球の温暖化によって緑や緑陰の重要度がますます高くなることは確実です。日々の管理コストだけでなく、健康や気候変動対策などの公共的な価値を踏まえて緑に投資をしていきたいですね。