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ニューヨークの混雑課金がついに始動
case|事例
メトロポリタン・トランスポーテーション・オーソリティ(MTA)は、2025年1月5日からマンハッタンでの混雑課金を開始することを決定した。混雑課金によって得られた収入は公共交通の整備や維持管理の財源に充てられる。MTAは混雑課金によって、交通量が17%削減でき、公共交通利用が2%増加すると見込んでいる。また、交通量の削減によって大気質の改善も期待される。
ニューヨーク州知事は、当初、マンハッタンでの混雑課金に対して、生活コストの高騰などを理由に強い懸念を示しており、昨年6月に15ドル(約2,300円)を課金額とする当初計画は一度破棄されていた。その後、フレキシブルな課金方法などを採用することで調整が行われていた。
乗用車の課金額は、15ドル(約2,300円)を正式な額として、2031年までに段階的に引き上げられる。導入開始から3年間はピーク時9ドル(約1,400円)、夜間2.25ドル(約350円)が課金され、2028年から2030年は、正式な課金額の8割の水準となり、ピーク時12ドル(約1,900円)、夜間3ドル(約460円)が課金される。
課金額は車種によっても変わる。当初3年間の課金額では、バイクが4.5ドル(約700円)、小型トラックおよび通勤バス以外のバスが14.4ドル(約2,200円)、大型トラック及び観光バスが21.6ドル(約3,300円)となる。また、タクシーはゾーン内もしくはゾーンをまたぐ利用で1回の乗車当たり0.75ドル(約120円)、ライドシェアではゾーン内もしくはゾーンをまたぐ利用で1回の乗車当たり1.5ドル(約230円)が課金される。
今回のMTAの決定は、公共交通支持者からは歓迎されているが、自動車支持者からは根強い反発と批判がある。
insight|知見
混雑課金は、日本でも鎌倉などで過去検討されましたが、導入には至っていません。NYCでも導入まで紆余曲折がありました。課金による影響範囲が大きいのでなかなか合意形成が難しいことがよくわかります。
一方で、自動車の環境や社会に対する外部不経済を考慮すれば、制度の設計次第では非常に合理的な渋滞緩和策や環境施策になるように思います。また、慢性的な赤字でかつ運転士不足を抱える公共交通の持続可能な経営を支える財源としても期待できます。日本でも真剣に議論していいテーマだと思いました。