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ロンドン市交通局の公共交通への投資は英国全体の成長機会を支えている

case|事例

世界的なエンジニアリング企業「Hatch」の最新レポートで、ロンドン市交通局(TfL)の公共交通ネットワークへの投資は、サプライチェーンを通じて英国全体に便益が波及し、雇用と経済成長を支えている実態が明らかにされている。TfLのサプライチェーンは広範で、ゼロエミッションバスから標識に至るまで様々なものを供給している。過去2年間で、TfLは、3,000以上の英国内のサプライヤーに対し120億ポンド(約2.3兆円)を投じており、これは10万人の雇用を支え、英国経済に対して110億ポンド(約2.0兆円)の付加価値額をもたらしていると試算される。

サプライヤーの約3分の2はロンドン市以外に拠点を設けており、TfLの投資による経済効果の約3分の1はロンドン市外にもたらされている。サプライヤーの構成も多様で、30%は低炭素産業、10%は最先端技術やデータビジネスに関連する産業、62%は中小企業となっている。

またTfLは公共交通の投資以外にも英国経済を支えている。完全子会社である不動産会社のPlaces for Londonは、20,000戸の住宅を供給予定で、すでに供給済みの1,500戸のうち、54%はアフォーダブル住宅となっており、労働者の居住環境を整備する一翼を担っている。

TfLは2000年の設立以来、ロンドン市内の公共交通を改善し、住宅を供給することで、市民のアクセシビリティの向上や居住場所の提供を行ってきたが、その経済的な便益はロンドン市にとどまらず、英国全体に及んでいる。

insight|知見

  • 公共交通への投資が、製造業をはじめ様々な産業に波及効果をもたらすことを実態として明らかにしたレポートで面白く読みました。経済効果をどう定義するか、どういう境界で切って分析するかで公共交通の価値が変わって見えてきそうです。

  • 先日、名古屋のガイドウェイバスが、利用者の急増で大混雑しているにも関わらず特殊な車両を準備することができずに増便できないという記事を読みました。北九州のモノレールなどでも車両の更新が難しいという話を聞きます。公共交通への投資を続けていたらこのような事態を避けられたのではと思ってしまいますね。