アメリカは27億円をかけて公共交通指向型開発を促進
case|事例
アメリカ連邦交通局(US Federal Transit Administration:FTA)は公共交通沿線のアフォーダブル住宅の整備などへの補助として1,760万ドル(約27億円)の財源を確保した。補助は、超党派のインフラ法に基づくTODパイロットプロジェクトを通じて提供され、延べ16州の20地区が補助を受ける見込み。今回の補助は、公共交通沿線の住宅開発やオフィス開発を通じて交通の利便性を高めるための計画策定を対象としており、計画の中にアフォーダブル住宅の開発が含まれることや地元にマッチングファンドがあることなどが条件となる。
補助を受ける見込みのプロジェクトには、沿線でのアフォーダブル住宅開発が含まれるデンバー市のBRT整備計画(200万ドル)やリトルハイチ駅周辺でのTOD開発を進めるためのマイアミデイド運輸局の交通計画策定(125万ドル)、フェニックス市の3つの新しいLRT駅周辺での住宅開発計画(120万ドル)などが含まれている。フェニックス市の副市長は「信頼性が高く効率的な公共交通システムは経済を強化するだけでなくコミュニティの再生にも寄与する。このプロジェクトは単なるアクセシビリティの改善にとどまらず、コミュニティ全体に便益をもたらすだろう。」と期待を寄せている。
アメリカの生活コストの中で住宅と交通に関わる費用が最も高いため、今回の補助では交通費を下げアフォーダブルな場所を作りだすことを目的にしている。
insight|知見
アメリカでも自動車中心の都市からの脱却が着々と進んでいますね。アメリカの場合は、特に社会的な格差の是正が課題意識の中で多くを占めるような気がします。アメリカは自動車社会の典型のような都市が多いですが、実は公共交通への投資も怠っていないですよね。
翻って日本はどうでしょうか。ピーター・カルソープがTODという概念を提唱して以降、日本でも2000年代初頭くらいまでTODブームがあったように思います。それ以降、コンパクトシティやコンパクトプラスネットワーク、集約型都市構造などの類似した理念がTODの延長で検討されてきたように思います。
一方で、公共交通は担い手不足にあえいでいます。検討を積み重ねてきた理念を具体化すると共に、公共交通の経営も併せて刷新したいですね。