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電動自転車がいかに交通のあり方を変えるのか?
case|事例
世界中の都市で電動自転車が普及しはじめている。電動自転車(電動アシスト付自転車)は、移動の選択肢に不可欠かつ手頃な手段を提供し、住民の移動方法を変えている。一方で、電動自転車の販売台数は増え、人気を博してはいるものの、その利用パタンや行動変容などの実態の把握は十分ではない。
同済大学の研究論文では、その課題に着目し、電動自転車が日々の行動パタンがどのように変容させたかを調査している。研究では、上海の北西に位置する嘉定地区で自動車と電動自転車を両方所有する世帯を対象にしている。嘉定地区は人口180万人を誇り、電動自転車の分担率が27%、自動車の分担率が33%となっている。結論では、電動自転車がすべての世代で移動性を高め、自動車依存を減らすなどの利点が強調されている。論文で明らかにされた電動自転車がもたらす影響の主なポイントは下記の通り。
自動車依存の軽減:電動自転車を購入以降、研究対象の世帯では自動車利用が平均して19%減少した。それは特に短距離の移動で顕著で、短距離の自動車利用の多くが電動自転車に置き換えられた。自動車のみを所有していた時には1.5kmから自動車を使い始めていたが、電動自転車と両方を所有し始めてからはその距離が5kmからに変化していた。今後、自動車が特定の頻繁ではない目的で使われ、自動車の所有自体が減ることも期待される。
新たな移動手段:電動自転車は、環境にやさしく、通勤を楽にする以外の価値をもたらしうる。食品の買い出しや友人宅への訪問、旅行など多様な日々の活動を支える手段として利用されている。細街路が多く駐車場の少ない、自動車が決して実用的ではない嘉定地区のようなエリアでは特に移動手段としての重要性を増す。また、身体的な負担が少ないため、高齢者の長距離移動を可能にし、彼らの自立を支えるという、利便性以外の価値ももたらす。
公共交通への波及効果:電動自転車の増加は公共交通の利用にわずかながら悪影響を及ぼしている。今回の調査では、電動自転車が普及されるにつれ、バスや電車の必要性が若干減少している。著者らは、これは電動自転車が公共交通と完全に競合していることを示しているわけでなく、ニッチな領域を開拓しているのではないかと解釈している。
insight|知見
電動自転車は、モペッドと区別して考える必要があると思いますが、確かに身体的な負担も少ないので、幅広い世代の移動を支える手段になりそうです。論文でも指摘されているように、高齢者の自立を支えるという社会的なインパクトも面白い知見だなと思います。
また、短距離の自動車利用が置き換えられるというのも面白い結果だと思います。日本では、公共交通の経営にどの都市でもあえいでいますが、短距離移動は自転車や徒歩のようなアクティブトラベルに任せるというような総合交通体系の見直しも選択肢になりそうです。もちろん移動制約者の移動のケアは大前提ですが。
とはいえ、昨日の記事でも述べた通り、交通サービスの経営主体がばらついてる日本でどういうきっかけで自転車を交通体系に組み込む検討をはじめるのかは、悩ましいですね。