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都市と週休3日制―新しい都市のパラダイムに向けて

case | 事例

(バレンシア大学応用経済学部准教授で、『Quatre Dies. Treballar menys per viure en un món millor (週4日:より良い世界に住むために働く時間を減らす)』の著者、ジョアン・サンキス氏の論考 )

ダイナミックな活動の拠点である都市は、不安定雇用や生活の質の低下といった課題に取り組んでいるが、その問題への対処において、週4日制(週休3日制)に代表される労働時間短縮の概念が浸透しつつある。この週休3日制のアプローチは、都市における労働生産性、生活の質、持続可能性の向上に寄与できるものだと考えられる。

都市は歴史的に工業化と経済成長の中心地であり、工業生産に最適化されたワークスケジュールの必要性に応じて、労働の周期や時間が開発されてきた歴史がある。週5日の労働制は1926年にデトロイトでフォードが従業員の離職率を下げ、欠勤を減らし、優秀な従業員を自社に惹きつけることを目的で開始された。また、1919年のバルセロナのラ・カナデンカ・ストライキがスペインにおける1日8時間労働制の確立につながり、スペインはこの新しい基準を採用したヨーロッパで最初の国のひとつとなった。近年の「プラットフォーム経済」とサービス産業の営業時間の長時間化は、都市部での低賃金、細分化された労働時間、予測不可能性などの労働の不安定性をもたらしている。一方で、都市は最高の雇用機会と高賃金の職をも提供し、熟練した創造的な労働者を惹きつけている。このような背景から、収入の不安定な労働者は不十分な労働時間に直面し、雇用に恵まれている労働者は仕事と生活の両立に苦労するという対照的な状況が生まれている。

週休3日制の試験的研究では、生産性、仕事への満足度の向上と、ストレス軽減に効果があることが示され、より持続可能な移動と消費パターンを促進することができることが示されている。労働時間の短縮は、精神衛生上の問題や孤独感を和らげ、より積極的でコミュニティ志向のライフスタイルにつながり、高度なスキルを持つ人材を引き付け、維持することで、都市の生活の質と経済の活力を向上させることができる。さらに、労働時間の短縮は交通渋滞や大気汚染の軽減につながり、より持続可能なライフスタイルを促進する。このように、労働時間の短縮は、社会的、経済的、環境的課題に取り組むためのツールと考えられている。週休3日制を採用することで、都市はよりダイナミックで創造的、持続可能な場所となり、住民の幸福を優先することができる。

insight | 知見

  • この記事で初めて知ったので調べてみたのですが、週休2日を初めて大規模に試みたのは、ヘンリー・フォードで、フォード社で週5日40時間勤務制を導入して、土日は工場を稼働させないようにした結果、生産性は変わらず地域の消費活動が盛んになったことから、その後社会的に定着していったそうです。約100年前の出来事だったそうです。

  • 日本で今選択的週休3日制がや完全週休3日制の企業の記事を見ることがありますが、今後社会的に定着していくのであれば、都市内のオフィスと商業施設の役割の変化にも繋がりそうですね。