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都市部では緑地を犠牲にすることなく、より多くの住宅を建設することが可能

case | 事例

オランダのライデン大学の研究者は、オランダにおける持続可能な都市開発についての研究成果を発表した。2050年までにオランダでは約200万戸の住宅が新たに必要となることが予想され、空間への影響と環境への負荷に課題を抱えているとされている。研究では、オランダ環境評価庁(PBL)による将来シナリオを踏まえ、人口増加の場所、建築資材、緑地、都市の密集化といった要素を組み合わせて、持続可能に開発していくための方策を探った。研究結果によると、都市部の住宅はより小規模になり、より高層に向かう建築が一般的になる傾向にあるため、すでに開発された都市部の密度を高めることが、材料や土地利用の観点から最も効率的である。

この研究から得られた重要な洞察のひとつは、都市部において住宅を増やす際は緑地の犠牲を伴う必要はないということである。逆に現状より多くの緑地を創出することも可能で、その結果、冷却効果の向上、雨水吸収力の改善、レクリエーションエリアの増加などのメリットがもたらされると予想されている。シミュレーションでは現在ヒートスポットとなっているライデン市の中心部は、住宅と緑地の増加により、2050年までに問題が解消される可能性がある。

また、研究によると、農地などの未開発の土地に建物を建設することは、必ずしも悪い考えではないが、多くの場合、より多くの資材と土地利用が必要になることが強調されている。その結果、より大きな住宅と緑地のためのより広いスペースが必要になる。研究者は、特定の地域事情と組み合わせた空間と材料利用の両方を考慮することで、政策立案者が住宅、公共施設、緑地をより効果的に計画するのに役立つことを期待している。次の段階では、生物多様性や健康への影響など、モデルにさらに多くのパラメータを追加することを目指している。

insight | 知見

  • 記事を見てエドワード・グレイザー氏の『都市は人類最高の発明である』を思い起こしました。都市の密集性や多様性は環境面だけに限らず、経済面にもメリットがありそうです。

  • ただ、都市部を高密度・高層化して厳格に市民の居住地域を都市部に集めることは、自由で民主的な社会では急に進めることは難しいです。記事のような研究が、より環境に優しく密度の高い都市を目指すための市民の合意形成の材料になっていくといいですね。