エコノミスト誌がウィーンを「世界で最も住みやすい都市」に選出
case|事例
エコノミスト誌は、ウィーンの質の高い公共交通システムを評価し、世界で最も住みやすい都市に選出した。約200万人の市民のうち、半数は公共子通パスを所持しており、公共交通を利用する文化が根付いている。公共交通分担率は30%を誇り、市民の3分の1は歩いて通勤する一方で、自動車の分担率はわずか25%程度で、自動車の依存度が低い。公共交通利用者の満足度も高く、市民の91%が満足しているという調査結果もある。
このウィーンの文化は、質の高い公共交通サービスが支えている。2012年から公共交通の1日の利用料金は1ユーロ(約160円)で、アフォーダブルな利用環境が整っている。また高密度な運行が行われており、1日のバス、トラム、地下鉄の営業距離の合計は地球5周に相当する。
また数年前からウィーン市は、端末の移動手段を強化するためシェアモビリティの導入を推進している。現在では、自転車やEVによるシェアサービスが端末の移動手段として提供されている。これは、一度自家用車を使い始めるとなかなかやめられなくなるため、端末の数メートルですら自家用車を使わせないという思想に基づいている。
ウィーン市は、2年前に2040年までにカーボンニュートラルを達成するためのロードマップを策定した。これを受けて公共交通のネットワークの拡充とリニューアルに取り組んでいる。計画の遅延があったものの2030年までに地下鉄の新線が2路線開業する。また、20世紀初頭から走り続けているトラムのインフラ改修も進めている。これらの公共交通の拡充によってCO2が年間75,000トン削減されると試算されている。
insight|知見
ウィーンをはじめ着々と公共交通インフラに投資をしている都市と日本の都市を比べると、根本的に都市計画の計画思想が異なるのではないかと思ってしまいます。
脱炭素に向けても、高齢社会への対応としても、自動車依存からの脱却は自明だと思いますし、そのためには公共交通の拡充をしなければなりません。その時、端末まできちんと高水準の公共交通やシェアサービスが確保されている必要があります。
一方、日本では担い手不足や経営の悪化で公共交通網は縮小の一途です。住みやすい都市を謳うのであれば、生活基盤としての公共交通の拡充への投資を強化してほしいと思います。