NYCでは商業用ビルの住宅転換を推進
case | 事例
今夏、米国全体の商業用不動産の空室率平均が17%に達したことで、各都市ではこの傾向に対応できる持続可能な戦略を見つけようとしている。その中で、空室の住宅転換は多くの地域が検討している施策で、最大75%の減税措置を導入したボストンの事例が新しい。NYCは都心において住宅転換を推進する動きにある。同市の「City of Yes」イニシアチブは、アフォーダブル住宅を増やすことを目的としたものであるが、商業用不動産の住宅への転換も計画に含まれており、先月、オフィス転換アクセラレーター・チームの発足がNYCから発表された。
NYCのアダムズ市長は、空きオフィスの住宅への転換、オフィス転換アクセラレーター、ミッドタウン・サウス複合地区計画という3つの政策で住宅供給を増やしていくと声明で述べたが、特に都心のミッドタウン・サウス複合地区計画では、より多くの住宅建設を可能にするためにゾーニング(用途地域)を変更する緩和が行われ、1990年以前に建設された建物は住宅に転換できるようになり、ゾーニングで住宅が許可されていれば市内どこでも、オフィスやその他の非住宅用建物を住宅に転換できるようになる。また、高齢者住宅、シェアハウス、寮など、より多様な住宅タイプを転用可能にしている。
一方で、このような商業用不動産の住宅への転換がオフィスの過剰や住宅不動産価格の引き下げにつながることを期待しているのは、行政部門からの視点に限られており、「オフィスの住宅への転換はほとんどの場合、実現不可能」と言う不動産の専門家もいる。住宅へのコンバージョンは商業ビルの内装を全面的に改修する必要があり、各戸への配管、通路、ガラス壁の改修、エレベーターの再配置、内壁や避難階段の増設など、物理的な課題と財政的な課題に直面することになり、「実際には、建物を壊してゼロから始めた方が早い場合もある」とのこと。ただ、費用対効果は個々のビルの情況に依るものなので、NYCがこのような施策を持っているということは有望なことだと専門家も認識している。
insight | 知見
記事で触れられているボストンの減税措置は見落としていましたが、先月下旬に発表されていたようです。デベロッパーがオフィスをアフォーダブル住宅に改築する際は29年間にわたり最大75%の税の減免が講じられるようです(参考記事:Boston offers incentives to turn empty offices into affordable housing.)
不動産の専門家が言っているように、オフィスビルのマンションへの改築はすぐに思いつくアイデアではありますが、実現するのはかなりハードルが高そうです。用途地域の緩和以外に、税制優遇、助成といった政策の組み合わせがないと動かないのかもしれません。