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都市は意味のある気候変動対策を講じなければ「深刻な悪化」に直面する

case | 事例

ロンドンで開催された医学アカデミーと医学誌『The Lancet(ザ・ランセット)』の年次国際健康講演会において、気候変動と健康に関する専門家が、意味のある気候変動対策を講じない都市は、インフラの崩壊と環境悪化による深刻な悪化の未来に直面すると警告した。基調講演を行ったマーク・ニューウェンハイセン教授は2050年に欧州が異常な高温下にあるようなシナリオを回避するためには、都市は健康を最優先事項として適応していかなければならないと指摘した。

2050年までに、世界の人口の3分の2が都市で生活すると予想されているが、気候変動は都市部の人間の健康をますます脅かしており、広範囲にわたるアスファルトやコンクリートが気温上昇を悪化させている。気候変動は37%の熱関連死の原因となっており、都市は特に熱波や猛暑に対して脆弱であるため、都市における気候関連の死亡を防ぐには、健康に重点を置いた都市計画が必要であると教授は述べた。都市のスプロール化は自動車への依存度を高める一方で、人口密度が高いコンパクトシティは、アクティブ交通・公共交通の推進やエネルギー効率の向上、建築資材の消費削減などの利点が見られる。ただ、コンパクトシティにも、死亡率の上昇、交通混雑、大気汚染や騒音公害、熱の滞留などの潜在的な欠点も存在する。

教授の分析によると、都市は概ね、死亡率が高いが温室効果ガス排出量は少ないタイプと、死亡率は低いが高排出量であるタイプに分かれるが、都市が市民の健康状態を改善しながらも、排出量を削減する政策を実施することは可能だと指摘している。特に公共空間の利用により、排出削減と環境改善という目標をつなげる都市モデルは有用で、パリの15分都市の取り組み、バルセロナの「スーパーブロック」、ロンドンのLTN(Low Traffic Neighborhood)、フライブルクの自動車乗り入れ禁止区域などは、いずれも健康悪化を食い止め、かつ気候変動に対応する有望な解決策だと訴えた。

insight | 知見

  • 当コラムでもパリの15分都市、バルセロナのスーパーブロック、ロンドンのLTNなどの記事をこれまで紹介してきましたが、それぞれの取り組みは都市の課題解決に向けた実験・試行から始まったものだと思います。それが、数年経過して様々な観点から検証されきた中で、学術的にも一定の効果に対する根拠が整理されてきたのではないかと思います。

  • 都市の環境や人々の健康を良くするためのチャレンジは、他都市の真似でも構わないので、大いに進めてもらいたいと思います。