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【翻訳】直ちにあなたのwin-rateを向上させる2つの簡単なエクスプロイト【SauloCosta#9】
ブラジルのトッププレイヤーであるSauloCostaのnewsletterからの翻訳になります。ニュースレターの日本語翻訳をnoteにアップして公開していいかDMをしたところ本人の承諾を得ることが出来たため、このような形で公開させて頂いております。
誰しもが知る鉄強プレイヤーのニュースレターを、このような形で公開出来る事に感謝します
認知バイアスに対抗する解毒剤を見つけ、それを活用してより多くのお金を稼ぐ方法を学ぼう
このニュースレターの最初の記事、約2か月前に「なぜ搾取的なプレイをしてはいけないのか」という理由について書いた。
先週の記事「学習時間を無駄にしない方法」でもこのテーマに触れたが、これは「Poker Made Simple」で繰り返し扱うテーマになるだろう。
しかし、ここには問題がある。しかも、大きな問題だ。この大きな問題は心理的な性質を持ち、ポーカーテーブルで最善の合理的な判断を下すのをしばしば妨げる。もし、私たちがより良いポーカープレイヤーになりたいのであれば――そして、ここでの私の目標はそのプロセスをより簡単にすることだ――この問題について話し合う必要がある。
この問題は、「人間は判断において基準や合理性から体系的に逸脱するパターンがある」という残念な事実の事だ。
上記の文は、認知バイアスに関するWikipediaの定義だ。
大きなダウンスイングを経験したことがあるだろうか?本格的なポーカープレイヤーであれば、(十分なボリュームをプレイしているなら)少なくとも年に一度はそういった期間を経験するだろう。やる気に満ちた状態でテーブルに座り、良い判断を下そう、新しい日がもたらす新しいチャンスを掴もうと希望を持ってプレイを始める。そして……セッション開始からわずか5分で、デッキから左右にクーラー(不運な展開)を投げつけられるような感覚に陥る。まるで意図的にそうされているように思えることさえある。
何度もカモにされたり、短期間に何度もブラフがキャッチされたりすると、事態が悪化していくように感じる。最終的には、次の敗北を予期するようになる。ポストフロップで良いハンドを作ったとしても、相手が自分よりも良いハンドを持っているに違いないと考え始める。フロップでブラフを始めても、すでにトリプルバレルブラフが4thペアにコールされるシナリオを予測しているように感じるようになる。
「これから先も状況が悪化する」という信念や予想が非常に強くなると、痛みを避けるためにプレイスタイルを変え始める。ほとんどの人は、このような状況ではパッシブになり、リスクを回避する傾向が強まる。
上記の例は、典型的な認知バイアスの一つである「ギャンブラーの誤謬」を経験している人の例だ。これは、過去の出来事によって将来の確率が変わると考える傾向のことを指す。過去数日、数週間、あるいは数ヶ月間、ひどく悪い成績だと、次のハンド、次の日、次の週も成績が悪くなると思い込むようになる。これは明らかに間違いであり、未来のハンドの確率は最近の損失とは全く関係がない。しかし、この事実を知っていても、必ずしもこのバイアスを免れるわけではない。
私はポーカープレイヤーが数多くの認知バイアスを示しているのを見てきた。ほぼすべてのコーチングセッションで、生徒が自分のハンドを特定の方法でプレイした理由を説明する際に「確証バイアス」を示す場面を見ることができる。彼らは自分が選んだ選択肢を支持する理由だけを挙げ、それ以外の選択肢を選ぶべき理由を無視している。同じハンドの議論の中で、「アンカリングバイアス」を示すこともある。これは、ハンドの絶対的な価値に早い段階で執着し、それが低い相対価値を示す兆候を完全に無視して自分を納得させるのだ。さらに、「心的投影の誤謬」も見られることがある。これは、「自分が世界をどのように見ているかが、世界が実際にそうであることを反映している」と考えるバイアスだ。自分が相手の立場ならある特定の方法でプレイするだろうと思い込むことで、無意識のうちに相手もそうしていると仮定してしまう。
この3つは非常に明確な例であるが、こういった認知バイアスの例はまだまだ挙げればきりがない。
しかし、この記事で問題に焦点を当てたいわけではない。解決策を提示したいのだ。問題は明確だ――テーブルでの意思決定において、自分自身を完全には信頼できないということだ。これらの心理的バイアスのために、驚くほど多くのミスを犯す可能性がある。これらのバイアスは、まるで自分の同意なしに頭の中で形成されているように見える。では、解決策は何なのか?
解決策は「事実」にある。
事実は意見を気にしない。事実は感情を気にしない。事実は認知バイアスなど気にしない。事実は、主観的な経験や定性的な推測を一切排除した裸の真実だ。
事実は認知バイアスに対する解毒剤である。
事実が解毒剤となるのは、事実を丹念に観察することによって、どのようなシナリオで何が最善のプレーなのかという答えを追求するために、定量的な分析を採用することができるからである。主観的な経験も、定性的な推測も必要ない。必要なのは数字と方程式だけだ。ちょうど「2+2=4」がどんな日でも変わらないように、ポーカーもそのように扱える。
ポーカーにおける事実を確認する方法は、ポピュレーショントレンド(母集団の傾向)を研究することだ。特定のスポットで特定のプレイヤープロファイルの平均的な行動を自分の記憶に頼って判断するのではなく、単純にデータを参照し、その状況について統計が何を示しているかを確認する。この文脈では、データが多いほど良い。サンプルサイズが大きくなるほど、統計がより正確で信頼性のあるものになるからだ。
この記事では、認知バイアスを克服し、ポーカーでより多くのお金を稼ぐのに役立つ、事実に基づいた2つのエクスプロイトを紹介する。さっそく始めよう。
EXPLOIT #1 - レクリエーショナルプレイヤーに対するオーバーブラフ
この最初のエクスプロイトはポーカーの常識に反している。多くの人は、レクリエーショナルプレイヤーに対してはブラフをかけるべきではないと信じている。なぜなら彼らはコールしすぎるからだ、と
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それは本当に正しいのか?データはそれについて何を示しているのか?事実は何なのか?
面白いことに、「レクがコールしすぎるのか、それともコールが少なすぎるのか」というような本来は定量的な議論が、コミュニティでは主観的な経験を通じて形成されることがよくある。レクがコールしすぎるのか、それとも少なすぎるのかを、自分の記憶から彼らの行動を思い出すことで判断することは出来ない。そして、たとえそれができたとしても、自分自身の限られた個人的な経験をもとに、プレイヤープロファイル全体の行動を一般化することはできない。データを確認せずに真実を見つける方法は存在しない。それ以外のプロセスは偏りが生じたり、結論が不十分だったり、効果的でなかったりする。それにもかかわらず、コミュニティ内で人々がテーブルでどのように振る舞うかについての意見のほとんどは、主観的な経験や逸話的証拠に基づいて形成されている――そしてこれらすべてが、先に述べたバイアスの影響を受ける。
では、事実を確認してみよう。以下は、BB対BTNのシングルレイズポット(SRP)のトリプルバレルラインで、リバーに50%ポットベットをした際、レクがどれくらいの頻度でフォールドするかを示したスクリーンショット(15,000回の試行結果)だ。
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ここで少し数学が必要になる。この42%のフォールド率が「高すぎる」か「低すぎる」かを判断するには、まず理論的にどれくらいフォールドすべきなのかを知る必要がある。
理論的観点から見ると、ブラフキャッチ戦略の目的は、ベッターのブラフがベットしてもチェックしても期待値(EV)が変わらない状態、つまりインディファレントにすることだ。ブラフが0%のエクイティ(つまり、チェックラインでは0EV)を持つと仮定すると、ブラフをベットしても0EVにするために必要なフォールド率を計算するのは非常に簡単だ。
EV(bluffing) = Pot * Fold% – Bet * (1 – Fold%) => If pot is 1, and Bet = 0,5 (half pot), then EV(bluffing) = F – 0.5 + 0.5F.
ここでブラフのEVを0にする必要があるので:
0 = 1.5F - 0.5 => F = 0.5/1.5 = 0.3333または33%。
この計算を完全な式で示したが、実際には以下のような公式を使えば簡単に計算できる:
alfa = s/(1 + s)
ここでsはポット単位のベットサイズを表す。この公式はポーカー理論で有名な「アルファ変数」を表している。アルファは、与えられたベットサイズに対して最適なプレイヤーがフォールドすべき頻度を示すだけでなく、ベッターがブラフとバリューベットをどの割合で混ぜるべきかも示している。たとえば、ポットの半分をベットする場合、最適なプレイヤーは1バリューベットに対して0.333のブラフを持つべきだ。この割合を守ることで、ベッターのブラフがブラフキャッチャーにとって「コールしてもフォールドしても同じEV」となる。つまりベッターは、ブラフキャッチャーに提示するポットオッズ(この場合は25%)と全く同じ割合のブラフをベッティングレンジに持つことになる。
上記の計算から、ブラフキャッチプレイヤーは、ベッターをブラフで無関心にさせたければ、自分のレンジの1/3しかフォールドできないことがわかる。しかし、実際のゲームでレクは42%をフォールドしており、これは9%のオーバーフォールドである。このラインでブラフする事がどれだけの利益を生み出しているのか計算してみよう:
トリプルバレルラインでリバーまでにポットが22ビッグブラインド程度になると仮定すると、ハーフポットサイズでレクにブラフを仕掛けた場合のEVは次のようになる:
EV(bluffing) = Pot * Fold % - Bet * (1 - Fold%) = 22 * 0.42 - 11 * 0.58 = 2.86.
つまり、リバーでレクに対してハーフポットサイズでブラフをするたびに、2.86BBの利益を得られる。この数字を使って、チェックバックが最良の選択肢となるエクイティの閾値を計算することもできる。
EV(checking) = Pot * Equity => 2.86 = 22 * Equity => Equity = 0.13 or 13%.
つまり、リバーで13%未満のエクイティしかないハンドであれば、チェックバックよりもブラフをした方が利益が大きくなるということだ。
トリプルバレルラインは、ブラフが明らかに利益が出るものの、レクリエーショナルプレイヤーを相手にした場合、最も利益率が低いラインの一つだ。ほとんどの他のラインの方が高い利益をもたらす。これはつまり、レクリエーショナルプレイヤーへのブラフを仕掛けることでゲームツリーのほぼすべてのプレイラインにおいて、利益的であることを意味する。数字は嘘をつかない。
次回、リバーでレクリエーショナルプレイヤーに対してブラフを試みる場合、4thペアにコールされることを恐れたり、ブロッカーが悪いと気落ちする必要はない。あなたはすでに数字を見ており、それに反論する余地はない。自信を持ってブラフをすればいい。長期的にはそのプレイが正しいと分かっているからだ。
もちろん、データに基づくアプローチにも課題はある。最も重要なのは、この42%のフォールドエクイティが単なる平均値であることだ――ボードのテクスチャによってアクションが異なる可能性がある。最も正確な研究では、異なるボードテクスチャでの期待フォールドエクイティを調査し、特にブラフが利益的でない例外を見つける必要があるだろう。しかし、これは基本をすべてカバーした後に取り組むべき、より高度なアプローチである。
EXPLOIT #2 - レクリエーショナルプレイヤーに対するオーバーコール
私のビデオを見たことがある人なら、これは驚くことではない。YouTubeで動画を公開した初日からずっと言っていることだ。
レクはレグよりもブラフを多用する。ずっとだ!
その理由は、彼らがプリフロップで非常に広いレンジをプレイするからだ。例えば、彼らはBBからどのポジションに対しても50%以上のハンドをコールドコールする:
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6maxNLHEであなたがSBからレイズしてBBのフィッシュがプリフロップでコールする。AhiフロップであなたのスモールCbetをレイズし、ターンでベットし、リバーでもベットをする。彼はどの程度ブラフしているだろうか?
正解者はわずか20%で、50%近くがブラフだった。その通り、AハイボードのBB対SBでレイズ、ベット、ベットをしてきた場合、相手のベットレンジの50%前後がブラフになると予想される。
覚えておいてほしいのは、誰かがポットの2倍をオーバーベットしてきたとしても、彼らが40%以上の頻度でブラフをすればオーバーブラフしていることになるということだ。50%がブラフというのは、次の通り「バランス」と比較してどれだけオーバーブラフしているかを示す:
2倍ポットサイズでは10%のオーバーブラフ
ポットサイズでは17%のオーバーブラフ
ハーフポットサイズでは25%のオーバーブラフ
これは、コミュニティがレクリエーショナルプレイヤーをどのように認識しているかを考えると驚くべきことだ。上記のクイズでは、ほぼ半数の人が彼らがほぼ0%のブラフだと思っていた!
確証バイアスに惑わされてはいけない。数字は嘘をつかない。レクリエーショナルプレイヤーはリバーで大幅にオーバーブラフしている。だから、もしもっとお金を稼ぎたいなら、彼らに対してコールボタンをもっとクリックするようにしよう。
さらに、テーブルで相手に対して活用できる、事実に基づいたエクスプロイトについて知りたい場合は、以下の動画をチェックしてほしい。この動画では、実際のプレイでリアルタイムに解説している。