![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/159278919/rectangle_large_type_2_49e5673cf5888bf4e2e1ed764b6f3314.png?width=1200)
【翻訳】タイミングテルの考察【SauloCosta#6】
ブラジルのトッププレイヤーであるSauloCostaのnewsletterからの翻訳になります。ニュースレターの日本語翻訳をnoteにアップして公開していいかDMをしたところ本人の承諾を得ることが出来たため、このような形で公開させて頂いております。
誰しもが知る鉄強プレイヤーのニュースレターを、このような形で公開出来る事に感謝します
タイミングテルの2大要素を探り、理解する。
先週、私は自分のYouTubeチャンネルに「How To Exploit Timing Tells」というタイトルのPlay & Explainを投稿した。
このテーマは私がポーカーで最も好きなテーマの一つなので、今がニュースレターにこのトピックを掲載するのは適切なタイミングだと思った。
この投稿では、タイミング情報をどのように使って対戦相手を攻略するかに焦点を当てるのではなく(その紹介は私のビデオを参照してください)、ここではその現象の根本的な因果関係に側面に焦点を当てる。一体何が原因なのか?そして、なぜその原因を理解することが重要なのだろうか?
私は個人的に、テーブルでのエクスプロイトの実行は、そのメカニズムを深く理解することで非常に容易になると強く信じている。なぜその調整を行うのかを深く明確に理解することができれば、それを正しく実行できる可能性が高くなるし、うまくいかなかった場合でも冷静さと自信を保つことができる。
もちろん、私の言うことを鵜呑みにすることもできる--私を信頼しているから、またはこれまで示してきた証拠に納得しているかのいずれかだからだ。だが、私の意見では、タイミングテルがあらわれる根本的な原因を実際に理解しようとすることに時間を割く方が、長い目で見ればはるかに有利になる。一緒に見ていこう。
ここで最初に重要な免責事項として、これから説明することはすべて、レギュラーのアクションを分析するという文脈で考えるべきだということだ。レクリエーショナルプレーヤーもタイミングテルを出すが、(レギュラーの場合のように)私の認識を裏付ける実際のデータを持っていないので、この記事では脇に置いておきたい。
では、本題に入ろう。タイミングテルが存在する原因は一体何なのか?
最初に述べたように、この質問には2つの異なる答えがある。実際プロとしてオンラインポーカーをプレイする際の2つの主要な要素が、タイミングテルの自然な発生に繋がっている。
集中力と注意力の問題
私は1つ目のものを「集中力と注意力の問題」と呼んでいる。
オンラインポーカーをプレイしている自分を思い浮かべて欲しい。もしあなたがシリアスプレイヤーなら、一度に一つのテーブルだけをプレイしていない可能性が高いだろう。ファストフォーマットのテーブルを主にプレイするのであれば、同時に3~4つのファストテーブルをプレイすることになるだろう。通常のテーブルを主にプレイするのであれば、同時に6~12テーブルをプレイすることになるだろう。
一度にプレイするテーブルの数に関係なく、一つだけ確かなことは、同時にすべてのテーブルをプレイすることは出来ないということだ。それは明らかに不可能である。その代わりにすることは、テーブルを交互にプレイし続け、意思決定が必要になると1テーブルずつアクションを選択する。
もしテーブル1、4、6で意思決定をする必要が場合、残念ながらすべてのテーブルを同時にプレイすることはできない。代わりに4番テーブルでボタンをクリックし、次に1番テーブルに視線を移し、そこでまたボタンをクリックする。そして最後に6番テーブルに視線を移し、そこでまた別のボタンを選び、戦略的なゲームプランに従ってクリックする。
そして、ここからが面白くなる。
6-4-1や1-6-4ではなく、4-1-6の順番でアクションをすることにしたのはなぜだろうか?意識的にせよ無意識にせよ、あなたはどのテーブルを優先すべきか判断した。たとえば、4番テーブルのタイムバンクが残り少なくなり、そのテーブルを優先せざるを得なくなったのかもしれない。たまたま4番テーブルのKhQhがあなたの好きなハンドだったので、そちらを先にプレイしたかったのかもしれない。
私たちが意思決定の優先順位を決定する際には、さまざまな内部的なメンタルアルゴリズムが働いている可能性があるが、特に早いストリートでの繰り返しのアクションにおいて最も決定的な役割を果たすアルゴリズムが1つある。それが「ハンド強度アルゴリズム」だ。
ハンド強度アルゴリズムは、時間的の制約下での意思決定において最も明白なアルゴリズムである。時間的な制約がある状況では(アクションにかけられる時間には限界があり、それを超えるとハンドが無効になる)、最も論理的なアルゴリズムは、金銭的価値の高い決定を優先することである。ほとんどの状況でEVの低いハンドを優先することは意味をなさない。
それは、テレビ番組(またはより現代的な参考として、MrBeastの挑戦)のようなもので、スーパーマーケットや家電店で、60秒間で自分のカートに収まるすべてのものを無料で持ち帰れる挑戦に似ている。このようなチャレンジにおける最も明白な戦略は、まず一番高い値段の商品を優先し、自分のカートをできるだけ多くの商品でいっぱいにすることだ。最高値の商品がなくなったら、2番目に高い値段の商品を狙う、という具合だ(商品の体積はこの際無視しよう)。
あなたが好むと好まざるとにかかわらず、あなたとレギュラーたちが同じアルゴリズムを使っている事が多い。テーブル1でボタンでAAを持っていて、テーブル6でHJでT8oを持っている場合、あなたの無意識のアルゴリズムは、あなたにとって長期的に最もEVの高い戦略であるAAを最初にアクションすることであり、その後に何もなければ、HJのT8oをフォールドする決定をするだろう。 テーブル2でKKを持っていて3ベットに直面し、同時にテーブル4で98oを持っていて3ベットに直面した場合、あなたはテーブル4より先にテーブル2のアクションを選択するだろう。あなたのアルゴリズムがそう指示するのだ。そしてそれは『良いアルゴリズム』なのである。
それを行うことは完全に理にかなっている。HJからT8oをフォールドすることは、あなたにとって文字通り0ドルの価値しかない。最終的にそのハンドでタイムアウトしても、あなたは何の損失も被らない。しかし、AAでは全く逆のことが起こる。プリフロップでタイムアウトしてAAをフォールドすることは、あなたのwin-rateにとって信じられないほどひどい影響を与える。AAは1ハンドにつき数BB以上の価値があり、つまり100ハンドあたりでは数100BBの価値がある。AAでタイムアウトしている場合ではないのだ。
この内部的で無意識のアルゴリズムのために、プリフロップのタイミングテルのほとんどが発生する。RFIのタイミングがいい例だ。私のGrind Simulator(私はタイミングテルに関する2つのビデオでそれについて話している)では、この効果を示すいくつかの関連する統計がある。
タイミングを考慮しない 場合、私の生徒達は3ベットに対して65%の確率でフォールドした;
1.5秒以下のタイミングでRFIした場合、3ベットに対して58%の確率でフォールドした;
9秒以上のタイミングでRFIを行った場合、3ベットに対して70%の確率でフォールドした。
タイミングを考慮しない 場合、私の生徒は3ベットに対して10.5%の確率で4ベットした;
1.5秒以下のタイミングでRFIした場合、3ベットに対して14.1% の確率で4ベットした;
9秒以上のタイミングでRFIした場合、3ベットに対して8.4% の確率で4ベットした;
この数字は、早いタイミングで行われるアクションが平均的に強いレンジによって実行されることを示している、タイミングを考慮しないレンジや長いタイミングのレンジと比較して、3ベットに対してフォールドが少なく、4ベットが多いことを示している。一方、長いタイミングは、フォールドの多さと4ベットの頻度の低さからわかるように、弱いレンジによって構成されていることがわかる。
とはいえ、長いタイミングが「完全にゴミのようなハンド」というわけではないことに注意してほしい。まだコンティニューに値するような強いハンドは30%もある。タイミングテルは2分法的な現象ではなく、確率的な現象である。基本的に何が起こるかというと、強いハンドが長いタイミングでプレイされる確率は低く(それでも0よりは高い)、弱いハンドが長いタイミングでプレイされる確率は高くなる(100%ではないが)。ただ、すべてのタイミングでの分布が均等に分布されていないということである。
下の2つのグラフは、バランスが取れたRFIのタイミングのプレイヤーのAAの確率分布(図1)と、実際のプレイヤーの分布(図2)を示している:
![](https://assets.st-note.com/img/1729858009-Zc3TLEml5InubaQ0gSRDMroA.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1729858113-fXKAuxoIta4n1FhZYrlzbEmv.png?width=1200)
タイミングテルの最も悪い点は、同時に複数のテーブルでプレイしている場合、タイミングテルを出さないことはほとんど不可能だということである。これを克服する唯一の方法は、ランダム化アルゴリズムを採用し、次に実行するアクションを、ハンドの強さによって選ぶのではなく、ランダマイザーによって選ぶことである。しかし、これは負のEVアルゴリズムであり、EVの低いハンドのアクションを優先している間に、EVの高いハンドでタイムアウトしてしまう可能性がある。それでは元も子もない。
この問題を軽減する一つの方法として、強いハンドでより多くタンクすることがある。しかし、これは非常に非効率的であることに注意しよう。もしあなたが強いハンドのすべてでタンクし始めたら、あなたはエクスプロイトされる方法を変えただけである。あなたの早いタイミングには強いハンドがないのだ。観察力のある対戦相手なら遅かれ早かれそのことに気づくだろうし、あなたはまた逆の方法でエクスプロイトされるだろう。
まとめ
集中力と注意力の問題とは、私たちの注意と集中が一度に一つのことにしか向けられないという事実を指す。しかし、オンラインポーカーをプレイするとき私達は通常、複数のテーブルをプレイする。そのため、複数のテーブルを「同時に」プレイできるように、私たちは常にテーブルを切り替え、どのテーブルに最初に集中し、次にどのテーブルに取り組むべきかを決める優先順位付けアルゴリズムを採用している。明確な理由から、無意識であれ意識的であれ、私たちはEVの高いハンドを優先し、それを最初にプレイする。それがハンド強度アルゴリズムである。
このアルゴリズムのせいで、早いタイミングのアクションは平均的に強く、長いタイミングのアクションは平均的に弱くなる(特にベット/レイズの決定において)。しかし、この意図しない結果がアルゴリズムを悪いものにしているわけでは無い。ハンドがキルしまうかもしれないという時間的制約があるときに、EVの高いハンドを優先するのは論理的なことなのである。
意思決定の難しさ
ポーカーをプロとしてプレイする経験の中で、タイミングテルが存在する2つ目の大きな要素は、「意思決定の難しさ」である。これは非常に理解しやすい。
BTNからAAをプリフロップでオープンするのは非常に簡単だ。ハンドを見て、自分が何をすべきかすぐにわかる。一瞬でアクションが出来る。
一方でリバーでフラッシュが完成したときに、サードペアをブラフレイズに回すかどうかを決めるのは、それほど簡単ではない。決断するまでに15秒はかかるだろう。
全く同じスポットでも、ハンドが違えばタイミングは違ってくる。もしあなたがA7を持っていて、K72rのBB対BTNの場面でスモールCbetに直面したら、あなたの決断はとても簡単だ。コールである。その判断は約0.5秒で出来る。しかし、バックドアフラッシュドローを持つJ8sを持っていたらどうするか?フォールド、コール、レイズ?レイズするのであれば、どの程度のサイズにするのか?レイズの頻度は?混合戦略を取るのであれば、ソフトウェアから提供される数字を使ってランダム化しなければならない。このような思考と検討には時間がかかる。
この問題の明白なポイントがわかってきただろう。そしてここでも、前と同じように、この問題から抜け出す簡単な方法はあまり多くない。ポーカーには常に簡単な決断と難しい決断があるのだ。
長い時間をかけて、最終的にベットに対してコールをする人は、その判断が簡単なものではなかった可能性が高いことを相手に示している。なぜなら、簡単な決断であれば、平均的にもっと早く行動するため、「タンクコールレンジ」に占める重みが、難しい決断よりも低くなるからである。一方、あなたがベットし、相手がスナップコールした場合、相手が判断の難しいハンド(コールとフォールドの境界線に近いハンドなど)を持っている確率は著しく低下する。そのようなハンドは(高い確率で)試行時間を要するからだ。
繰り返しになるが、これは二元な現象ではなく、確率的なものであることを強調しておきたい。簡単な決断が長い時間を要することが決してないわけでも、難しい決断が早く行動されることが絶対にないわけではない。しかし、ゲームの性質と決断そのものが、様々な種類のハンドに対するタイミングの確率分布に歪みを生じさせる。
この問題を緩和する唯一の方法は、難しい決断でタンクするのと同じくらい、簡単な決断でタンクすることだろう。実際、そのようなことをしているプレイヤーは何人も見かける。最も有名なのは、ハイステークスのMTTプレイヤーであるChristof Vogelsangだろう。彼は、プリフロップのフォールドのような、最も些細な場面でも長い時間をかける事で、コミュニティから批判の的となっている:
![](https://assets.st-note.com/img/1730001211-1aZqyAGD3N5J8MtWHPh2LFQC.png?width=1200)
彼のような例外はさておき、99.9%のプレイヤーは難しい意思決定のタイミングを積極的に調整しようとはしていない。プロの中には、リバーで非常に強いハンドを持っているときにバリューベットする時間を少し長くして、タイミングを操作しようとすることがある(あなたにも共感してもらえると思うが)。そのようなアプローチでは異なるタイミングをバランスよくするには全く不十分だ。観察力のあるプレイヤーなら、常にそのアンバランスを見抜けるだろう。
まとめ
ハンドによって判断の難しさは異なる。私たちは、判断が非常に簡単なときには素早くアクションする傾向があり、判断が難しいときには自然とアクションに時間をかける。このことが、ハンドとそのタイミングの確率分布に別の歪みを生じさせる。短いタイミングに「簡単な判断」のハンドが含まれる確率は、長いタイミングに同じ種類のハンドが含まれる確率より高く、長いタイミングに難しい判断のハンドが含まれる確率は、短いタイミングに難しい判断のハンドが含まれる確率より高い。この問題は、ゲームの性質に起因しており、全ての意思決定が同じ難易度ではなく、異なるレベルの難易度を持つ決断が異なる時間を必要とすることにある。この問題を緩和する唯一の方法は、簡単な決断でも時間をかけて難しい決断と同じタイミングに合わせることだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1730010694-KcFe5UbXQjEWf8HmZA20zyLu.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1730010753-pDEdsbL7u3tK4qCaWmIFGgOh.png?width=1200)
総括
これがタイミングテルが起こる2つの主な理由である。すべての決断を同時に行うことはできないので、強いハンドを優先する。また、異なる決断を同じ速度で行うことも出来ない難しい決断ほど時間がかかるためである。
結局のところ、よく考えてみれば、このようなことはすべて自明のことなのだ。これらが存在しないということはあり得ないし、それは避けられない。だから私はいつも、タイミングテルを暴くことは簡単な事なのだと言っている。
高度な技術に近いのは、その情報を使って一体何をするかということだ。提示された証拠に基づいて、自分のレンジをどの程度調整出来るのか、あるいは調整すべきなのか。複数のタイミングテルをどう組み合わせて、相手のレンジを正確に描写するのか?混在するタイミングのシグナル(短いタイミングの後に長いタイミングが来る、またはその逆のケース)をどう見極めるのか?
このような高度なレンジ構築のパラメーターはすべて、今年後半の私のタイミングテル講座で取り上げるつもりだ。プリフロップからリバーまでのゲームツリーの最重要なスポットに対する自分の推奨する調整方法を紹介し、最も情報を含む典型的なタイミングに対してどのようにレンジを調整するべきかを解説する。各シナリオにおけるプリフロップでの適切なレンジと、ポストフロップでのレンジの調整方法を示し、相手を攻略する方法を教える。
それまでは、私のチャンネルから以下の2つのビデオをチェックしておいて欲しい。