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【研究】3BPのSB vs BTNとBB vs BTN。Cbet戦略はどう違うんじゃ?③〜Khiボード2種の考察〜
前回の記事『【研究】3BPのSB vs BTNとBB vs BTN。Cbet戦略はどう違うんじゃ?②〜フロップテクスチャーによる戦略の変化〜』の続きになります。
有料記事として投稿してありますが、有料部分には何も書かれていません。
本文は全て無料で読むことが出来ます。
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前回のハイカード毎の比較で、Khiボードにおいて取られる戦略がBBとSBで大きく違う点について取り上げましたが、実際にSB vs BTN 3BPの、モノトーンでは無いKhiボードでレンジ全体で安いCbetを打つ。という簡易戦略を実行しているプレイヤーは多いのでは無いでしょうか?
実際、SBにおけるその簡易戦略はEVlossが少ない事が多い訳ですが、ことBBとなると、Khiボードと言えども均衡戦略上のチェック頻度が40%を超えるボードも多く、脳死で安ベットをする。という訳にはいきません。
今回はSB vs BTN 3BPにおいて広くCbetが打たれるボードであるKhiボードから
K97レインボーと、KK8ツートーンの2つをピックアップして考察していきます。
▼前提 Effective Stack 100bb
BTN 2.5bb c
SB 12bb
or
BTN 2.5bb c
BB 13bb
K97レインボー
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ここでのOOPに共通する戦略として大きいBetサイズがほとんど使われない、という点が挙げられます。
SB概要
Khiボードの中ではEQ,EVのアドバンテージは少ない方ですが、それでも54%近くEQが3bettor側にあります。SBの戦略は前述した通りレンジ全体のEQを活かした100%レンジ安ベットで問題無いのですが、(下図参照。EVlossは許容範囲内かと個人的には感じます)
均衡戦略から汲み取るに、このボードにおいて最もベットのモチベーションが低いハンドがBDFDの無いAhiとQQ(JJ,TT,88)である事も確認出来ます。
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BB概要
以上を踏まえてBBの戦略を読み解いていきます。
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Khiボードに関わらずレンジ全体のEQはほぼ五分でEV,EQRはビハインドの状態です。実はこのようなKhiボードは結構多く、黄色の丸で囲まれたブロードウェイ+ロースーテッドのハンド群がノイズとして多数含まれるので、ベットレンジを分割する必要がありそうです。具体的なハンドクラス毎の打ち分けを見ていく前に戦略を簡略化出来るかを試みてみます。
とにかく俺は楽したい
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上の二つの画像はGTOWizardAIを用いた戦略になります。ベットサイズを沢山打ち込んでチェックをアクションから除外したツリーが①ですが、こちらは全レンジ10%ベットが採用されています。EVlossは1.5%ほどありますね。さすがにやめておいた方が良さそうです。
②の画像はベットサイズを1つに絞ったものです。EVはむしろ向上していますがオートマチックのベットサイズはキモいので今回はSimpleのソリューションで提示された戦略を見ていきましょう。
ハンドクラス毎の打ち分け
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オーバーペア(AA)やトップヒットは基本的にベットしていくが、キッカーが弱くなるほどベット頻度が落ちていく。
SBの場合も均衡戦略上チェック頻度があったQQ,JJ,TT,88-のポケットペアはチェック優勢、BDFDの無いAhiを含めたエアー群はほぼ鉄チェックになる。
ただし良型のBDSDに発展しうる+相手のコンテニューするハンドをブロックしているAJやATはBDFDが無いところでもベットするモチベーションがあるハンド(AQはブロッカー効果は良いがハイカードとして価値がある+BDSDになるアウツが少ないのでチェックに残しがち)
2ペアやセットなどのナッツクラスはインディファだがチェックに残す事も多い。
セカンドヒット、サードヒットはほぼチェックに残す。
ブラフで打つハンドはOESDとガットショットでベット頻度は高めだがナッツにならないガットショット(T6s,85s)はチェック優勢(でも65sはめっちゃ打つw)
いかがでしたか?粒度がかなり細かくなってきましたが、言うまでもなく全部暗記する必要はありません。傾向を掴み、近似したボードで実戦で使えるようヒューリスティクスを構築する事が目的です。続いてチェックした後の戦略を見ていきましょう。
BBの戦略vsBMCB
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バランスの取れた打ち分けをすると、BTN側もおいそれとBMCBを打つわけにはいかず、レンジの58,4%ものハンドでチェックスルーを選択します。vsBMCBの戦略が主眼ですので詳しく解説しませんが、トップヒットやセットもチェックスルーする事が結構ある。ぐらいの認識でいいでしょう。
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2つのサイズのBMCBに直面したときの比較です。見やすくする為full-heightにしていますのでご注意下さい。
繰り返しますが暗記はしないで下さい。一部のプレイヤーを除きポーカーが楽しく無くなってしまいます。
ここでのイシューはcallするハンドの閾値を理解する事、ハンドのElasticityを理解する事です。
BMCBのサイズに関わらず、低頻度チェックに残したオーバーペアやトップヒットグッドキッカーはレイズする事が非常に多い。
セット、2ペアはスロープレイすることが比較的多いがボトム2ペアである79sは鉄レイズ
優先的にブラフに回すところは低頻度チェックに残したハイカード系のガットショット(KJsやKQsをブロックしている)
セカンドペア、サードペア系もブラフに回すところも多いがベットサイズにより戦略が大きく変化する(が、foldはしない)
セカンドペア、サードペアはinelastic(非弾性的)であるelastic(弾性的)なところはアンダーポケットペア(JJ-)と強いAhiである
おまけ:チェックスルーした後のOOPのターン戦略
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OOPにとって最悪なカードは8>>T>6、チェック頻度が高くなるのは8>6>T
A,K,Q,JはOOPにとって良いカードだがAが落ちた時は130%サイズを多く使用するのでベット頻度は高くない(2eが約85%なので130%のベットにcallされるとSPRは0.5になる…)
ベット頻度が高くなるのはボードペアが出来た時だが、最も頻度が高くなる7のリピートの時でもレンジの50%はチェックする。
以上がK97レインボーのBB戦略になります。続けていきましょう。
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KK8ツートーン
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SB概要
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まずはこちらをご覧下さい。最もOOPのEQの低いKK6ツートーンでさえOOPのEQは54.5%となっております。(左下のチェック頻度が目立つボードはAKKです)
ツートーンであれペアでは無いカードが何であれ、ベットしまくっていますね。全レンジCbet出来るボードはターン以降の分岐やレイズを受けた時の知識量が他者との差になってくるので、本研究の趣旨とは違ってくる為、これ以上の言及はやめます。
とりあえずCbetから始まるSB vs BTN 3BP生活です。
BB概要
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KペアボードでもOOPのEQ、EVがビハインドになるボードが沢山あります。ガットショットドローの無いKK+8以下のボード(ツートーン、レインボーどちらも)が不利な傾向にあるようです。
なぜでしょう。
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ペアボードになったことでお互いにボードに絡まないハンドが増えるわけですが、ヒットにならないところのハンドの強さ、コンボ数の差に要因がありそうです。
EQ60%未満のハンドはBB側により弱いハンドが多い事が顕著に見て取れます。
とにかく俺は楽したい
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全レンジベット戦略はさすがにEVlossが激しく無理でしたが、66%サイズを使用しない戦略を採用したところチェック頻度は下がりEVはほぼ同等、EQRは改善しました。
こちらのソリューションをベースにベットを分割していく事が出来そうです。
ハンドクラス毎の打ち分け
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個人的にRuseAIの提示する戦略は、比較的シンプルで再現性が高いところが優秀だと思っています。暇な人はこのボードにおいて最初にGTOWが提示したBBの均衡戦略と比べてみて下さい。潔くて好きです笑
トリップスはほぼチェックしない。例外はAK,KQ,K9oでAK,KQは相手のフロートしてくるAxやQJs,QTsをブロックしている為,後者は最低のキッカーを持つオフスートハンドをチェックレンジに入れることでチェックレンジに残すトリップスを確保する為だと推測される(オフスートの方がコンボ数が多い)
ポケットペアはランクによって扱いが違う。8ヒットより強いポケットペアは♠️、❤️持ちでベットすることが明確に好まれる。プロテクトの必要性が薄いAAやKKよりもQQ,JJ,TTでベットする事を好むが98sなどをブロックしている99はベットするモチベーションが低くなっている。77,66は鉄チェックだが、レンジの中で最低のポケットである55はのちのストリートでのブラフのセットアップの為スートに関係なくベットし始めている
8ヒットとクワッズ、フルハウスは完全なインディファ
ブラフハンドのチョイスは様々なハンドを使用するがA♠️を持ったオフスートのAロー辺りは鉄ブラフ、ブロードウェイ+ローカードスーテッドのエアー群はBDFDの無いところは鉄チェックしてギブアップ
フラドロは強いフラドロを積極的にベットして弱いところをチェックに残しがちなのはセオリー通りだが、あえて強いところをチェックレンジに残すならAQsとAJsを好んで残す
BBの戦略vsBMCB
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RuseAIのソリューションではBMCBには25%サイズが用いられますが、それにしても驚きのレイズ頻度ですね。
MDFよりも大幅に多くのハンドをfoldしている。その分レイズ頻度が高くなるペアボードあるある。
メイドハンドやポケットペアの多く、フラドロやBDFDでレイズを返すがコールレンジに残す代表格は色が無いAA,QQとクワッズ、フルハウス、A♠️Q♠️、A♠️J♠️。
メイドハンドはfoldしない。
ターン以降の分岐はRuseAIが集合分析に対応していないので詳しくは記載しませんが、Cbetを打った後は安バレルが明確に好まれるカードが多い。チェックスルーした後はチェック優勢でダブルフラドロボードにならない限り安いディレイドCbetが好まれやすい。
程度の認識を持ってご自身で色々探してみてください。
まとめ
いかがでしたか?
Khiボードにおいて、BB側はチェックコール(あるいはレイズ)である程度エアー群をフロップの段階で捨てることにより強くなったレンジをレイトストリートに持っていく。という戦略を採用することがわかってきました。SB vs BTN 3BPでOOPのEQが低いボードでSBが採用する戦略に似ているように感じます。
BBがチェックコールしたターンのドンク戦略なども、非常に興味深い動きをしたりして面白いのですが。。。。。。
収集がつかなくなりそうですので、今回はこの辺りで筆を置かせて頂こうかと思います。
次回、初めての研究記事の最終回として、8hi以下の具体的なボードにおける戦略の比較をしていこうと思います。
了
記事は以上になります。
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