「マシュマロ テスト」と「ラマダーン」
2020年4月。ラマダーンがやって来た!
世界のイスラム教徒のうち、健康に問題なく、信仰心のある者達は絶賛断食中のこの時期。
断食とは言っても国の緯度にもよるが、今、私のいる場所だと、朝4:30頃から、夕方18:00頃まで、飲み食い禁止。汗がダラダラと流れるような日は水分もダメなのはちときつい。
で、夕方のお祈りの時間になったら、断食解禁‼️
普段であれば、モスクでの集団礼拝、街へ繰り出したり、家族や親しい者同士で一緒に食卓を囲んだり、一緒にイスラムについて勉強したり、贈り物をしたりと、本当に楽しい時期なのだが、今年はコロナのために、世界中のムスリムも『ステイ ホーム、キープ ディスタンス』であるが故、これまでにないくらい地味なラマダーンを過ごしている(はず)。
我が家のラマダーンも、数ヶ月前に予想し、準備していたものとは全く違う形で迎えることとなった。
イスラム教徒はポイント制?!
イスラム教徒というのは、スーパーで買い物をすると貰えるポイントと同じように、毎日、善行ポイントを貯めながら生きている。(詳しいことはかなり割愛しております…)なんのためにポイントを貯めるかって?
イスラム教徒の最終的な目標達成のためだ。
それは地獄に堕ちないで、天国に入るためにだ。(ここで、天国なんかあるの?とかの質問はナシ。イスラム教徒はそのように信じていることを前提に話しを進めます)しかも、天国もランクがあるから、少しでもいいランクの天国に入りたい。そのために、日々宗教的義務をこなし、善行を積んでポイントを貯めているのだ。
ならば、イスラム教徒が住む国はみんな素晴らしいところに違いない!って……。そうは問屋がおろさないってことは皆さんもご存知のように、人間は弱いもの。そんな簡単に善行出来ないし、むしろ悪行ばかりを積んでしまうもの。悪いことをすれば、当然ポイントは減らされてしまう。
しかし、このラマダーン月はスペシャルな1か月。例えば、いつも人間に悪いことをするようにそそのかすシャイターン(悪魔)もいなくなると言われているし、普段の善行ポイントが、5倍デーどころか、数万倍デーもある!
また、ポイントを積むための行いがたくさん出来るような仕掛けが組み込まれている月なので、天国行きのポイントゲットスペシャル月間なのである。ラマダーン中はイスラムソサエティーは善意で溢れかえるのである(ほぼ)。
「マシュマロ テスト」
というものをご存知だろうか?どうも有名な実験だそうだ。(Wikipediaによる解説を読んでいただきたい)
ざっくり言えば、目の前に置いたマシュマロ(など子どもが好きなお菓子)を目の前に置いて、
①すぐに食べるを選ぶか、
②20分待てたら、お菓子が倍もらえる、を選ぶか、
という実験で、まあ、大抵の子どもはなかなか20分も待てずに、お菓子をパクッと食べてしまう。しかし、中にはしっかり20分待てる子どももいるようで、さらにこの実験のすごいところは、将来、その子等がどのような大人になるか?まで追跡しているというのだ。
その結果、20分待てた子どもの方が、待てなかった子どもよりも、社会的に成功していたり、健康状態がよかったりしたという報告が出されたというもの。
で、この待てる力、我慢できる能力というか、つまりは意志の力だと思うが、これは生まれつきなのだろうか?
意志の弱さは生まれつき?
私は幼い頃から、常々「意志薄弱」な子どもと言われて育ってきた。お稽古事や通信教育が長続きした試しがないとか、今思えば、ごく普通に子どもってそんなものでは?という程度だと思うのだが、いつも親からそう指摘されると、自分は意志薄弱で長続きしない特性を持った人間なのだと思い込まされてしまう。
たが、色々な人達がこの「意志」について研究したり、解説してくれている本を読むと、訓練を重ねていけば、この頑固な「意志」も変化しうるものであるということがわかってきた。
すごくこの本は参考になった!
どうも、意志薄弱というものは、訓練すれば多少はなんとかなりそうだ。
だって、飲兵衛の私が断酒に成功したのだし!
この「マシュマロ テスト」のことを知ったとき、すぐに思い浮かんだのは、ラマダーン中の断食のことだったのだ。
ラマダーンはイスラム教徒の強さ(しぶとさ)の秘密?
自分がイスラム教徒になる前も、そしてイスラム教徒になってからも、イスラム教徒って、強い(しぶとい…失礼極まりない表現でゴメンなさい)人達だなあと思っていた。
いっつも戦争ばっかりやってて、大変な目にあっていたりするのに、信仰をやめないし、私のこれまでの人生の中で出会ってきたイスラム教徒達もとにかく生存能力というか、困難な状況下でも諦めない強さとか、あきれ返るぐらいにすごいなあと思うことが多かった。
その強さは、国民性か、個人の特質なのかとも思ったが、自分がイスラム教徒になってみて、どうもそれは日々の信仰がトレーニングになっているのではないか?と思うようになった。
果たして、イスラム教の様々なテキスト類にも、そう書いてあった。
つまり意志の強い人間に変革していくための仕組みがイスラム教の教えの中にうまいこと組み込まれいるのだ。日々の1日5回の礼拝も勿論そうなのだが、その際たるものが、このラマダーン月に行う断食であることは間違いない。
そもそも断食しろって、誰にも強要されてない。ただ、イスラム教徒で、第二次成長に達した者で、健康に問題がなければ、神様(アッラー)から、やれ!とは言われているものの、断食をするかしないかの判断は本人次第。(女性は生理中、断食しなくてよい)
しかも、ぶっちゃけ、こっそり影で食べたり飲んだりしても、誰も分からない!
なのに、う〜ん、苦しい〜と思いながらも、ちゃんときまりを守って断食を続ける。また、その断食が無効にならないように、様々なことを我慢する。(日中、奥さんとsexするとか)
自分で自分を苦しめて、あんたマゾですか?!
信仰のない人からしたら、「アタマおかしい?」と思われたとしても私は、まあ、そう取られても無理はないわな、と思う。
現代では、医学的、科学的にこのラマダーンの断食について解説してくれる媒体も多く、身体的、精神的な面へのポジティブな効果があることを教えてくれている。しかし、昔の人々はそんなことよくわかっていなかったはずだ。
でも、なんと言っても、私がこの断食で一番、大事なポイントは「誰も見ていないのに、必死に我慢する。約束を守る」という心の働きだ。
断食して、多少は痩せるかもしれない。(実は私を含め太る人もいる!)でも多くの人はそこではなく、目に見えない、会ったこともない神様との約束を必死に守って、これまた本当に貰えるかわからない神様からのご褒美を心から期待して、空腹、喉の渇きに耐えるという行為は己との戦い、ジハード(奮闘すること、努力することの意味。テロを起こす意味ではない。笑)だ。
ちょっと真面目に信仰行為をするだけで、意志の強い、諦めない(しぶとい、しつこい…)人間が出来上がるのである。こんな訓練を幼い頃から少しずつやって、心を鍛えていくのである。これは嫌でも強くなるでしょう。
ウチの息子10歳も、今年ははじめて、毎日の断食にチャレンジしている。去年までは時々、週末のみチャレンジしていたが、自分よりも幼い女の子達が断食すると知って、負けていられないと思ったようだ。
大人になれば、否応が無しに、人生とはなかなか厳しいもの、思い通りにいかないものだと知る。しかし、その時に、どうやってその苦しい時を乗り越えるかの知恵は、酒で誤魔化す以外の方法を残念ながら私は両親からあまり学ぶことはなかった。
今はまだ、数回の断食をこなしたくらいなので、自分の意思が強くなったとは断言することは出来ないが、なんとなく、今までよりかは、我慢強くなっていっているような気がする。気のせいかもしれないけれど。
では、断食すれば、誰でも意志が強くなれるのか?
それは分からない。
少なくとも、私もイスラム教徒になったからやれるけど、そうじゃなかったら、絶対無理だろうな!!
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