ラ・マンチャの女
夢は個人的なことであってはならないという想いが私の心の中にある。なぜなら、公的な夢が叶ってこそ、個人も夢を見ることができるのではないかと考えるからだ。
犠牲とは言いたくないが、無辜の民のあっけない死の上に、私は感謝も告げずに平気で立っている。
そしていつか私の死の上に知らんぷりして誰かが立つだろう。
だからどうぞ、私のささやかではあるが叶えたい夢を持つことを許してほしい。
私が拙文「密やかなポスト」で記したように、たった一通の手紙で恋人に別れを告げた。結婚の約束もしていたのに話し合うこともしないで、一方的に私は決めてしまった。彼がどれだけ傷つくのかは、心の片隅にもなかった。宙ぶらりんの私たちの関係に残酷にも、止めをさすように
ピリオドを打った。
ああいう方法でよかったのだろうか、と今も喉に刺さった魚の骨のように私の心から離れることはない。
私のこの心の葛藤を、小説という形式を借りて具現化してみたい。そしてどこで生きているかもわからない、かつての恋人の目に留まり、私を赦すと言ってほしい。これが私の叶えたい夢だ。自分の過ちに導かれた夢なのである。救いの夢だ。
これなら「ラ・マンチャの男」の無謀な夢よりも、少しは叶うのではないか。そして喉に刺さったままの魚の骨も取れるような気がするのだ。
#叶えたい夢