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091.雪山ドライブ
bonsoir!🇫🇷 毎週金曜日更新のフランス滞在記をお届けします。
わたしがフランスで過ごしたのは冬の入り〜春の始まりの頃だったので、外が暑い時期はなかなか書き進めかったのですが、もうすぐ10月。だいぶ外の空気がひんやりとしてきて、当時の記憶に肌感覚を合わせやすくなってきました。
さて、今号は雪山をドライブした時のこと。わたしが滞在していたグルノーブルは周囲をぐるっと大きな山に囲まれていて、車を少し走らせると俗世とはまた違った雪山の世界に入っていけたのでした。
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時は2020年3月2日。
夕方少し時間をつくって、雪山を車でドライブすることに。いつも住んでいる街から見上げていた大きな大きな雪山たち。冬季オリンピックが開催されたこともあるグルノーブルはウィンタースポーツのメッカで、冬になると雪を求めて多くの人で賑わうと聞いていた。
グルノーブルアルプ大学のカフェでお茶をしていたら、たまたま日本人留学生に出会ったことがあった。グルノーブルはめったに日本人に会うことがないので、お互いに嬉しくなって話が弾んだ。スキーが趣味という彼は休日になると友人たちと雪山に出かけるんだと言って、実際にすべっている動画を見せてくれた。
「うわぁ・・すごい・・」
どこまでも広がる白銀の雪原の上をなだらかな弧を描き「スッスッ」と音をたててすべっていく。ゴープロで撮影されたのか、とても臨場感を持って伝わってきて、ここまで楽しそうに滑れたら冬のグルノーブル生活は最高だろうなぁ・・とうっとりしてしまった。
長野県で生まれ育ったわたしは学校の行事などことあるごとにウィンタースポーツをやることが多かった。にもかかわらず、わたし自身スキーもスノボもからっきしである。スケートはできるけれど、あえてしたいとは思わない。まず、スピードを出すのが怖い。転ぶと痛いし、何より寒いのが苦手なわたしには苦行以外のなにものでもない。
「出身は長野です。授業でスキー合宿があったよ」なんてというと、「いいなー滑れるんでしょ?」「滑るの好きなんでしょ?」と返されたりするのだけれど、わたしのような人間もいるわけだ。「わかるわぁ。沖縄出身というと、海が好きなんでしょ?泳げるでしょ?って言われるから困るよー」とカナヅチな友人とお酒の席でぼやきあったりしたことも。
しかし、本当に本当に楽しそうにスキーの話をする大学生の彼はキラキラしていて、純粋にいいなぁと思った。わたしはきっと「楽しい」の手前でスキーやスノボと関わることをやめてしまったんだろうなぁとも。
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夕方、ぼんやりと暮れなずむ空を切るように山道を進んでいく。30分もすると堂々たる雪山の姿が目の前に迫ってくる。そのままの姿がアートだ。
そして、道路の脇を挟むように、雪化粧をした沢山のもみの木が並んでいる。遠くから見ると寒々としている山も中にはいると木のおかげかどこか温かさや優しさを感じられる。3月に入ったからというのもあるのかもしれない。
山道の中にときどき踊り場のように駐車場が現れると、近くにはスキー場があって、雪の上を歩いたり、ソリ遊びをしたり、キャーキャーと雪に寝っ転がったりと、みんな思い思いに遊んでいて楽しそうだった。
「今度また連れてきてあげるからね」と夫が娘に言う。
さらにもう少し車で登っていくと、見晴らしの良い場所にでた。車を降りて、降り積もった雪をすくって小さな雪だるまを作った。空はあいかわらず薄暗いまだら雲がおおっているけれど、時々かすかにオレンジ色の光がさして、「春はもうすぐそこだよ」と告げているようだった。
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