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098.レシピは3人の修道士のみぞ知る。秘伝の薬酒、シャルトリューズ

Bonsoir!🇫🇷 毎週金曜日更新のフランス滞在記をお届けします。リキュールの女王とも称され、カクテル界では有名なお酒、シャルトリューズ。フランスのレストランで食事をしているとよく出会います。今号はフランスを代表するリキュール「シャルトリューズ」の蒸溜所を見学した時のお話。

デザートに出てきたシャルトリューズのアイスクリーム。



2020年3月8日。
私たちの滞在していたグルノーブルのすぐ近くのヴォアロンに、シャルトリューズの蒸留所があるということで休日に家族3人で出かけてみたのでした。

駐車場にはシャルトリューズ色のかわいい車が。
お城のような建物の中に入る
エントランスのステンドグラスもリャルトルーズ色。

グルノーブルの北部に位置するシャルトリューズの山々に囲まれるようにポツンと建つ修道院。ここで長寿の薬としてシャルトリューズの蒸留が始まったと言われています。日本でいうところの薬用養命酒といったところでしょうか。

なんでも、その薬酒の調合の仕方を知るのは代々3人の修道士のみ。フランス革命による修道院の解散や第一次世界大戦など、幾多の歴史的困難を乗り越えて、シャルトリューズのレシピは修道士たちにより口伝されてきたのだとか。

シャルトリューズに使われるたくさんの薬草。その調合の仕方を知るのは3人の修道士のみ。

この後見学ツアーの一行は、地下にある木樽の蒸留器が並ぶ部屋や、実際に修道士たちが調合する部屋を模した空間などに案内されるが、圧巻されて写真を撮るのを忘れてしまった。というか、ここはなんか、パシャパシャとシャッターを切るのがちょっと失礼なような、そこはかとない荘厳さが漂っていた。

昔のシャルトリューズのボトル。デザインがレトロでかわいい。
こっちが現在のもの。だいぶスタイリッシュになっている。

私はキリスト教の宗教観というものにあまり詳しくはないのだけれど、この修道士という存在、というか、修道士の手仕事というものに興味を持っている。それは伝統芸能ともある意味似てはいるんだけれど、ちょっと違う。俗世を離れた空間で粛々と、何か自分を超えた大きなものの安寧を願って手を動かす人たちを想像すると気持ちがしんと鎮まりかえってくる。この感覚が好きなのだ。それはけっこう自分には馴染みがあるもので、たとえば、、時々家族の洗濯物を畳んでいる時や、誰かのことを思ってお味噌汁を作っている時にやってくる、フワッとしたクリア優しいそれとよく似ている。

「あやちゃんって、前世修道士っぽいよね」

と誰かに言われたことがあるけれど、そうか、手仕事を尊ぶ主婦ってもしかしたら修道士味が出てくるのかもしれない。別に主婦や修道士じゃなくてもいいのだけれど、誰かの何かを願って手を動かす人を、私はものすごく尊いと思う価値観を持っているみたいだ。

見学ツアーが終わると、最後はショットグラスで・・
乾杯!
帰り道の夕日がいつもと違う色に見えた。



後日談。
日本に帰っても、フランスの楽しかった時間を思い出せるようにと空港で小さなシャルトルーズのボトルを買ったのですが・・。

空っぽ・・。

夜な夜な、仕事で頭が冴えすぎてしまう日にちびちびと飲んでいたら気づくと空っぽに。なんとなく罪悪感から瓶が捨てられなくてそっと梅酒の奥に隠しておいたらついに夫に発見されてしまって、「え!!?なんでなくなってるの!??」と呆れながら爆笑されてしまった。・・うん、やっぱり私は、修道士にはなれないな。

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